バレエ『白鳥の湖』第11曲、原曲を聴くと長かった!? CDを買う前に要注意! 『白鳥の湖』第11曲には長い版と短い版がある!
『白鳥の湖』第11曲「情景」は、王子ジークフリートとオデットが出会い、互いの気持ちを確かめていく重要な音楽です。
2人の出会いから、少しずつ心が通い合っていく様子が音楽と踊りで描かれます。
ところが、この第11曲、版によっては終結部にあたる音楽が、かなり大胆にカットされていることをご存じでしょうか?
以前の記事でも、『白鳥の湖』では音楽の一部が省略されたり、別の場面へ移されたりすることをご紹介しましたが、同じような違いが第11曲にも見られるのです。
今回は、動画を使ってカット版と原曲に近い形を聞き比べてみましょう。
※以下の動画は、できるだけカットの違いが分かりやすい場面から再生できるようにしています。ぜひ続けて聞いてみてください。
第11曲・カット版の動画
まずは、終結部の音楽がカットされている例から見ていきましょう。
ここで取り上げるのは、コンスタンティン・セルゲイエフ版、ヌレエフ版、ピーター・ライト版です。
これらの動画では、第11曲の終わりに向かう音楽の扱いに注目してみてください。
特にコンスタンティン・セルゲイエフ版は、マリインスキー・バレエの伝統とも結びつく重要な版です。
日本のバレエ界にもロシア系の上演様式などを通じてさまざまな影響が及んでいます。
そのため、今回のようなカットを採用した舞台に慣れている方は、こちらの形のほうが聞きなれているかもしれませんね♪
場面としては、悪魔ロットバルトがオデットとジークフリートの仲を妨げるところです。
音楽の流れがどこで短くなるのか、意識して聞いてみてください。
【コンスタンティン・セルゲイエフ版】
【ヌレエフ版】
【ピーター・ライト版】
第11曲・原曲に近い形の動画
次に、終結部の音楽が省略されず長く演奏される例を聞いてみましょう。
カット版に聞き慣れていると、こちらは「ずいぶん長いな」と感じるかもしれません。
終結部の音楽が残されることで、ロットバルトが2人の間に割って入る場面が長く描かれたり、オデットとジークフリートの踊りがさらに続いたりします。
【ブルメイステル版】
【グリゴローヴィチ版】
【パトリス・バール版】
音楽が長くなるだけでなく、舞台上で見せられるドラマの時間も変わってくるのです。
もちろん、実際の振付や場面の見せ方は版によって異なります。
ここでは、動画ごとの音楽の長さと、舞台上の動きがどのように対応しているかにも注目してみてください。
スコアでも確認してみよう!
耳で聞き比べたら、今度はスコアでも確認してみましょう。
『白鳥の湖』第11曲カット箇所.pdf
(P294~299の赤枠部分がカットされがちな個所)
スコアを見ながら聞くと、音楽がどこまで続いているのか、カット版ではどのあたりが省略されているのかを、より意識しやすくなりますね。
カット版に慣れていると、原曲に近い形の終結部は、少し長く感じられるかもしれません。
舞台全体のテンポや、次の場面へ進む流れを考えれば、「ここはカットしてもよいのでは?」という判断にも、十分な理由がありそうです。
バレエでは、音楽をそのまま演奏することだけが正解ではありません。
振付や演出、上演時間との兼ね合いによって、音楽の一部を省略する選択がなされることもあります。
この点は、以前ご紹介した『白鳥の湖』の「グラン・アダージョ」における、いわゆる「ドリゴの終止」とも少し似ています。
舞台での流れを整えるために音楽の形が変わることがあるのです。
長い原曲に近い形にも、カット版にも、それぞれの舞台上の狙いがあると考えると、単に「削られているから悪い」とは言い切れないと言えるでしょう。
最後に:CDを買うときも要注意!
ここで気をつけたいのが、CD選びです。
「第11曲を原曲に近い長い形で聴きたい」のか、それとも「舞台で聞き慣れたカット版で聴きたい」のか。
録音によって収録されている音楽の形が異なる場合があるため、演奏時間だけでなく、どの版・どの演奏なのかも確認しておくと安心です。
【カット版のCD】
チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」全曲(マリンスキーバレエ団 ヴァージョン)
【原曲に近い形のCD】
「アンドレ・プレヴィン指揮コヴェントガーデン王立管弦楽団」の「全曲『白鳥の湖』」
どちらにも良さがあります。
長い形なら音楽の展開をじっくり味わえますし、カット版なら舞台の流れが引き締まることもあります。
大切なのは、音楽の長さだけで優劣を決めるのではなく、振付や演出とのバランスで考えること。
ぜひ上の動画を使って、『白鳥の湖』第11曲の「長い形」と「短い形」を聞き比べてみてください。
いつも見ている舞台や、手元のCDの聞こえ方が、少し変わるかもしれませんよ♪
