バレエ『白鳥の湖』の第2幕に「ステテコ」があるって知ってた?第12曲 白鳥の登場の謎の呼び名
『白鳥の湖』には、バレエを知らない人が聞いたら、思わず「えっ?」となるような場面の呼び名があります。
それが――「ステテコ」です。
若い世代の人の中には、そもそも「ステテコって何?」という人もいるかもしれません。
昔ながらのステテコといえば、こんなもの。
昔の人なら、昭和のオジサンたちが履いていたイメージがあるかもしれませんね。
……まさか、白鳥たちがこれを履いて踊るのでしょうか?
もちろん違います(笑)。
実は、バレエの世界にも「ステテコ」と呼ばれるものがあるのです。
『白鳥の湖』の「ステテコ」は、ここ!
『白鳥の湖』第2幕(第1幕第2場)の湖畔の場面。
オデットとジークフリートが出会い、物語が進んでいく中で、湖に白鳥たちが登場します。
そのときの白鳥たちの動き。
何羽もの白鳥が、音楽に合わせてまとまって登場し、隊列を作りながら舞台を進んでいきます。
日本のバレエ関係者の間では、この一連の動きを昔から「ステテコ」と呼ばれてきました。
しかも、これは単なる一部のバレエ愛好家だけの呼び方ではありません。
日本のプロのバレエ団でも、普通に使われている呼び名です。
もちろん、チャイコフスキーの楽譜に「ステテコ」と書いてあるわけではありません。
あくまでも、日本のバレエ界で使われている通称です。
なぜ「ステテコ」なの?
では、なぜこんな名前になったのでしょう?
細かな由来を調べ始めると諸説ありそうですが、よく言われるのは、
音楽のリズムが「スッテテー、スッテテコー……」と聞こえるから!
というもの。
実際に音楽を聴きながら、白鳥たちの動きを見ていると、「スッテテー、スッテテコー……」と聞こえてくる……ような気がします……(かな??)。
他の説としては
●「ソテ、テコテコ」という振付から来た説
(ソテが飛ぶという意味で、飛んでテコテコと歩くという感じ?)
●「ステレオ(ステレオ・タイプ)」説
がありますが、いずれも昭和を連想させる下着がバレエ用語に使われるというギャップが面白いと言えるでしょう。
でも、「ステテコ」は意外と難しい!
名前だけ聞くと、なんだかコミカルです。
ところが、実際に踊っているところを見ると、印象が変わります。
白鳥たちは、ただ小刻みに歩いているわけではありません。
ソテ・アラベスクsauté arabesque(アラベスクの姿勢で跳ステップ)などの跳躍を使いながら、音楽に合わせて進み、何羽もの白鳥がタイミングを揃えて隊列を作っていきます。
一人だけタイミングが早かったり、遅かったりすれば、全体のラインが崩れてしまいます。
「ステテコ」は、名前はちょっと面白いけれど、実際にはかなり高度な群舞なのです。
しかも、白鳥たちは「自分だけきれいに踊ればいい」というわけではありません。
隣の人との距離。
前後の位置。
音楽とのタイミング。
そして、全員の動きの大きさ。
こうしたものを揃えながら踊らなければなりません。
名前は「ステテコ」。中身は「ソテ・アラベスク」!
名前はステテコ、でも、その中身を見てみると、ソテ・アラベスクなどを使った、白鳥たちの美しい群舞。
ちょっとふざけたようにも聞こえる「ステテコ」という名前と、舞台上で繰り広げられる優雅な白鳥たちの踊り。
このギャップが面白いですね。
『白鳥の湖』を観るとき、「次はステテコが来るかな?」なんて思いながら観てみると、今までとは少し違った楽しみ方ができるかもしれません。
「ステテコ」という言葉を知っているだけで、白鳥たちの群舞がちょっと身近に見えてくる。
これも、バレエの面白さの一つではないでしょうか。
