ワーグナーの『結婚行進曲』は、実際の結婚式で使用してはいけない!?バレエ『白鳥の湖』に影響を与えたリヒャルト・ワーグナーのオペラ『ローエングリン』の中の『結婚行進曲』について
以前の記事で、『白鳥の湖』との意外な共通点を持つ、リヒャルト・ワーグナーのオペラ『ローエングリン』についてご紹介しました。
今回は、その『ローエングリン』に登場する、有名な「結婚行進曲」のお話しです。
すでにあらすじをご存じの方はお分かりになると思いますが、実はこれ、作品のストーリーを最後まで知ってしまうと、「これ、実際の結婚式で使って大丈夫なのか!?」と思ってしまう曲なのです。
改めて「結婚行進曲」を聴いてみる!
ワーグナーを知らなくても、「結婚行進曲」は、誰もが一度は聴いたことがあるのではないでしょうか!?
荘厳でありながら華やかさがあり、結婚式の新郎新婦の入場や、退場などにも似合いそうな、まさに「おめでとう!」という雰囲気の音楽です。
『ローエングリン』では、第3幕冒頭の婚礼の場面で歌われます。
実際の結婚式場ではオルガンやピアノで聞くことが多いですが、実は合唱曲なのですね。
場面としては、新郎ローエングリンと、新婦エルザの二人を結婚を祝福するところです。
音楽だけ聴けば、「幸せな二人の門出」そのもの。
日本では「ワーグナーの結婚行進曲」として知られ、結婚式の定番曲ですね。
ただ、別の記事でも触れているとおり『ローエングリン』という物語は、ちょっと幸せな気分になるストーリーではないのです・・・。
『ローエングリン』は悲劇で終わる!
ローエングリンは、謎めいた騎士。
彼はエルザを救い、二人は結ばれることになります。
ただし、ローエングリンは結婚する上で、エルザに一つの条件がつけました。
それは、「自分の名前や素性を尋ねてはいけない」という意味不明なもの。
最初こそエルザは承諾するも、結局どうしてもその秘密を知りたくなってしまいます。
そしてついに、ローエングリンにその正体を問いかけてしまう。
するとローエングリンは、自分が聖杯を守る騎士であり、その名が「ローエングリン」であることを明かします。
しかし、正体を知られてしまった以上、彼はエルザのもとを去ってしまいます。
そして最後――エルザは死んでしまいます。
「結婚おめでとう!」という感じの音楽の先に待っているのが、夫との別離、そしてヒロインの死。
そう考えると、あの華やかな「結婚行進曲」が、急にちょっと違って聴こえてきませんか!?
もちろん、音楽そのものが悲しいわけではありません。
むしろ非常に華やかで、幸福感に満ちています。
だからこそ、物語を知っていると、「こんなに幸せそうな音楽なのに、この後が……」という、なんとも複雑な気分になるのです。
では、もう一つの有名な「結婚行進曲」はどうか!?
さて、「結婚行進曲」といえば、もう一人忘れてはいけない作曲家がいます。
フェリックス・メンデルスゾーン
メンデルスゾーンの「結婚行進曲」は、劇音楽『真夏の夜の夢』の中で使われる音楽です。
こちらも非常に有名で、ほぼ誰もが一度は聞いたことあるでしょう。
では、こちらなら安心なのでしょうか!?
まあ『ローエングリン』のような悲劇ではありません。
『真夏の夜の夢』は基本的には喜劇で、最後には恋人たちもそれぞれ結ばれ、結婚を祝う場面で「結婚行進曲」が演奏されます。
ワーグナーよりは、はるかに結婚式向きと言えます。
……なのですが。
作品の中身を知ってしまうと、こちらもなかなかな設定です。
物語の中では、二組の若い恋人たちが登場します。
ところが妖精の世界の「惚れ薬」のような魔法によって、「好きな人が変わってしまった!」という、とんでもない恋愛騒動が起こります。
もともと相思相愛だった二人の関係が、魔法によってぐちゃぐちゃになるのです。
その結果、いろいろと乱痴気騒ぎが起こります。
恋人たち同士、いろいろ取り違える。
妖精の王様と女王様は夫婦喧嘩。
人間と妖精が入り乱れる。
さらには人間の男がロバの頭にされる。
もちろん最後には魔法も解け、恋人たちは本来の相手と結ばれ、物語はハッピーエンドで収まります。
ですから、『ローエングリン』のような悲劇ではありません。
しかし、ストーリーを全部知ったうえで結婚式場で聴くと
「……まあ、いろいろ風紀が乱れてきたのですが・・・」
なってしまうのも無理はありません。
結論――有名な「結婚行進曲」、どっちも使わないほうがいいかも!?
というわけで、「結婚行進曲」として有名な2曲、どちらも作品のストーリーを知ってしまうと、ちょっと使いにくいということになってしまいます。
もちろん、曲そのものに「縁起が悪い」という意味があるわけではありません。
ワーグナーもメンデルスゾーンも、現在では作品から切り離され、結婚を祝う音楽として広く定着しています。
でも、物語の内容を知ってしまい、結婚式でこれらの曲が流れてきたら
「このストーリー、ちょっとアレなんだけど……」
と思ってしまう人も少なからずいらっしゃることでしょう。
