バレエ『白鳥の湖』に影響を与えたオペラ『ローエングリン』の大まかなあらすじのご紹介
今回はバレエ『白鳥の湖』に影響を与えたとされるリヒャルト・ワーグナーのオペラ『ローエングリン』のあらすじをご紹介します。
『ローエングリン』の影響はすでに他の記事でご紹介してありますが、今回はあらすじについての説明です。
あくまでもバレエファンのための『ローエングリン』の紹介なので、一般的なオペラ紹介ではありませんが、ワーグナーがチャイコフスキーに影響を与えた一端を感じていただければ幸いです。
登場人物
ローエングリン:聖杯を守る騎士。謎の「白鳥の騎士」
エルザ:ブラバント公国の王女
ゴットフリート:エルザの弟。ブラバントの正統な後継者
フリードリヒ・フォン・テルラムント:ブラバントの有力貴族
オルトルート:テルラムントの妻。魔法を使う女性
ハインリヒ王:ドイツ王
第1幕――「白鳥に引かれた騎士が現れる」
ブラバント公国では、先代の公爵が亡くなり、その息子ゴットフリートが後継者となるはずでした。
ところがゴットフリートは突然、行方不明になってしまいます。
そのため、姉のエルザが弟を殺したのではないか、という疑いをかけられます。
これを告発したのが、本作の悪役の一人である貴族テルラムント。
裁判の場でエルザは、自分を救ってくれる騎士の夢を見た、と語ります。
そして、「私のために戦ってくれる騎士が現れる」と信じています。
ところが、呼びかけても誰も名乗り出ません。
そこでエルザが祈ると……白鳥に引かれた小舟が、水面を進んできます。
その舟に乗って現れるのが、謎の騎士――ローエングリンです。
これが有名な「白鳥の騎士」です。
ローエングリンはエルザのためにテルラムントと決闘し、勝利。
エルザの無実が認められます。
そしてローエングリンはエルザに結婚を申し込みます。
ただし、とんでもない無茶ぶり条件をつけます。
「私の名前や素性を尋ねてはいけない」
エルザはそれを(安易に)承諾します。
こうして第1幕は、ローエングリンがエルザを救い、二人が結ばれるというところで終わります。
第2幕――「疑惑を植え付けるオルトルート」
ここから一気にドロドロして面白く?なっていきます。
テルラムントは決闘に敗れたため、名誉を失い、追放状態。
妻のオルトルートは、ローエングリンに対して強烈な敵意を抱いています。
そこで悪賢い彼女はは、エルザに近づきます。
そして、「あの騎士、本当に信用していいの?」という疑念を植え付けていきます。
一方、ローエングリンは人々から英雄として迎えられます。
彼はブラバントの守護者となり、ハインリヒ王とともに戦うことも約束します。
ところが、結婚式の直前になって、オルトルートとテルラムントが騒ぎを起こします。
テルラムントは、「あの男は何者なのか?」とローエングリンの正体を問題にします。
オルトルートも、「名前も素性も分からない男を信じていいのか」とエルザを揺さぶります。
エルザは不安になりますが、それでも最後にはローエングリンを信じることを選び、二人は結婚式へ向かいます。
第3幕――「禁断の質問」からの破滅的展開
ここが物語のクライマックスに入っていきます。
まずはここで『婚礼の合唱』。
この曲はメンデルスゾーンの『結婚行進曲』と並んで結婚行進曲として知られ、現在も結婚式においてオルガンなどで演奏されることが多く、誰もが一回は聞いたことがあるかもしれませんね。
原曲には合唱が付いているので、誰かの結婚式の時に、豆知識として教えてあげてあげるといいでしょう。
結婚式を終えた二人は、ついに二人きりになります。
当然、エルザはローエングリンを愛しています。
しかし同時に、「この人はいったい誰なの?」という疑念が消えません。
そしてオルトルートによって植え付けられた不安も、どんどん大きくなっていきます。
ついにエルザはローエングリンに問いかけます。
「あなたの名前は? どこから来たの?」
つまり、ローエングリンとの約束を破ってしまうのです。
すると、そこへテルラムントが襲いかかります。
ローエングリンはテルラムントを殺します。
そして、ローエングリンは、ハインリヒ王や人々の前で、自分の正体を明らかにします。
私は普通の人間ではなく、聖杯を守る騎士で、父はパルジファル。
自分の名は――ローエングリンと明かすのです。
彼の正体を知られてしまった以上、彼はこの世界に留まることができません。
エルザとの結婚生活も終わりです。
ローエングリンは聖杯の世界へ帰らなければなりません。
ローエングリンが去ろうとすると、あの白鳥が再び現れます。
するとオルトルートが、「あの白鳥こそ、エルザの弟ゴットフリートだ!」と明かします。
白鳥=ゴットフリートだったのです。
ローエングリンは祈りによって魔法を解きます。
すると白鳥は消え、ゴットフリートが人間の姿で現れます。
そしてローエングリンは、ゴットフリートをブラバントの正統な後継者として人々に託します。
ローエングリンは去っていき、エルザは愛するローエングリンを失い、ゴットフリートの腕の中で息絶えます。
最後に
こういった
「聞かないで/見るな/振り返るな」系
の神話・民話は、世界中の文化に普遍的に存在するモチーフで、日本でも イザナギとイザナミ(日本神話)で「私の姿を見ないで」というのがありますし、現代なら『千と千尋の神隠し』でも映画終盤でハクが千尋に「決して振り返ってはいけない」と忠告されています。
なんだか「〇〇するな!」なんて、人間心理的にはけっこう無茶ぶりな要求(設定)のような気がしますが、『白鳥の湖』におけるオデットの「永遠の愛を誓って!」も似たようなシチュエーションと言えるかもしれません。
そう考えると、『白鳥の湖』と『ローエングリン』のもう一つの共通点として鑑賞すれば、また違った視点で作品を楽しめるかもしれませんね♪
『ローエングリン』はリヒャルト・ワーグナーの作品の中では、まだ短いほうで見やすく、ストーリーも悲劇とは言え理解しやすいので、バレエファンの方もぜひ一度ご覧になっていただければと思います。
