都内には、男性の大人バレエ経験者が複数いる教室や、男女ともに通いやすい「アーキタンツ」のようなスタジオもあります。
しかし地方に目を向けると、一般の大人男性がまったくいない教室が多く、誰かの紹介がなければ「男性お断り」というところも珍しくありませんし、最初から男性は受け付けていないことを宣言する教室も多いです。
たとえなんとか入れても、男性は一人だけというのがごく普通の光景です。
日本における最新の全国統計
を見ても、学習者全体のうち男性はわずか3.1%で、女性は96.9%を占めています。
つまり、今もなおバレエの世界では圧倒的に女性が多数派ということです。
そんな状況の中で、大人の男性がバレエに興味があるから始めてみようと思っても、一人で教室の扉を開けるのは、ハードルが高いのは確かです。
やってみたい気持ちはあっても、ためらってしまうのは自然なことでしょう。
でも、そんなバレエの扉を叩くことに躊躇している男性大人バレエ初心者の方、安心してください。
居心地の悪さを感じるのは、実はレッスン直前だけなんです。
居心地が悪いのは「レッスン直前の待ち時間」だけ
いざ勇気を出してバレエ教室の扉を開け、レッスンする部屋に入った時――
それはまるで、しがない男性が大型百貨店の女性用化粧品売り場に迷い込んだ瞬間のようです。
甘い香り、まぶしい照明、どこを見ても女性ばかり・・・。
踏み込んではいけない世界に入ってしまった感覚にもなりますが、それほど心配はいりません。
女性客は化粧品に夢中だし、店員さんも仕事で忙しく、意外に人はあなたのことを気にかけることはないものです。
そしてこれは、バレエ教室でもまったく同じです。
最初こそ男性が1人でバレエ教室に現れれば、好奇の目で見られるものですが、レッスンが始まってしまえば、みんな先生の指導についていくのに頭がいっぱい。
初めて聞くバレエ用語、次々に出される振付、先生のお手本の動きを目で追うのに必死で、あなたも周りも男女比なんて考えている余裕は一ミリもありません。
つまり、いちばん気まずいのは
レッスン前のほんの数分だけ
ということです。
その時間さえ通り過ぎれば、あとは怒涛のレッスンが待っています。
最初の「ドアをくぐる勇気」さえ出せば、あとは流れに乗るだけで、バレエの世界は意外に他人に注意を払えないものです。
たいてい「フレンドリーなおばさん」がいる
気の弱い男性にとっては、少しの待ち時間でも、男1人で隅にいることに耐えられず、レッスンが始まる前に逃げ出したくなる人もいるかもしれません。
でも、数多くのバレエ教室を見てきて思ったことですが、大人クラスに限っては、どの教室にも、「異性への恥じらい」などとうに卒業したフレンドリーなおばさんが、けっこういらっしゃって話しかけてくるものです。
彼女たちは恥じらいよりも勢いが勝つタイプで、新入りを見つけると
「あら珍しい!男の人ねぇ!」
と、全方位ノーガードで接近してきます。
その勢いにのまれているうちに、こちらの緊張もいつのまにか消えていきます。
筆者はロンドンでもパリでもレッスンを受けましたが、どの国にもそういう方が必ずいました。
日本では人との距離をとる傾向が強いものの、大人バレエの人口分布的には中年世代が大きな割合を占めています。
「もう気恥ずかしさなんて通り越したわ」という雰囲気の方も少なくはないので、そういう人の近くにいると意外に話に入りやすかったりします。
恥じらいを越えた人々の笑顔は、国境を越える――これはもう、世界の真理です。
そういう方にうまく絡まれることができれば、レッスン前の待ち時間も、意外と楽しく過ごせるかもしれませんね。
最後に
男性は出産できませんが、大人男性が初めてバレエレッスンを体験する感覚は、「案ずるより産むがやすし」に似ています。
居づらさや気恥ずかしさなどは、本当に最初だけです。
レッスンが始まってしまえば、あなたを見る人はあなた自身だけとなります。
女性集団の中に飛び込むのは気後れするものですが、もしレッスンを受けたいと思っているなら、恐れずにバレエ教室の扉を開けてみてくださいな!
