今回はバレエレッスンに対する心構えのお話です。
バレエは室内で先生からの指示を受けて一定の動きで身体を動かすという意味では、エアロビクスに似ているものがあります。
実際のところエアロビクスの延長として活用している人もいるのですが、バレエをしているつもりでもエアロビクス的な動きになってしまっている大人バレエの方も多いです。
それを「エアロビクスバレエ」略して「エアロバレエ」と呼んでいますが、今回はそうならいようにバレエに対する向き合い方を考えていきましょう!
バレエは誰かに見せて、魅せるもの
バレエがエアロビクスと最も違うところですが、それは・・・
バレエは誰かに見せることが目的
だと言うことです。
エアロバレエは単純に身体を動かして脂肪を燃焼し健康増進をはかるもので、自分が満足することで完結するものですが、バレエは基本的には誰かに見てもらい楽しんでもらうものです。
もちろん自分が踊ることで楽しむという側面もバレエにありますが、理論的な最終目的地は
あなたの踊りで誰かを魅了させる
ことです。
初のバレエと言われている作品は、国外からの使節をもてなすために作られましたが、そういう歴史的経緯からもバレエは自分さえ楽しければいいというものではありません。
どんな理由でバレエレッスンを始めるのはかまいませんが、観客を意識している時点でエアロビクスとはまったく異なるものですし、レッスンをする上では常に人の目にさらされることを意識して練習に取り組みましょう!
エアロバレエの実例
ここでエアロバレエ(になってしまっている)実例を見てみましょう。
バレエはダイナミックに見えて、実は非常に繊細なもので
本人が正しく動いているつもりでも、知らぬ間にエアロバレエになってしまう・・・
厄介な??芸術です。
代表的な動きである「跳躍」と「回転」から考えていきましょう。
跳躍
まずは「飛ぶ」ことですね。
オリンピックの陸上競技でも走り幅跳びなどはダイナミックで迫力がありますが、バレエでも高い跳躍に観客は盛り上がります。
ただし、バレエは高く飛べればいいものではありません。
どんなに高く飛べていても、膝や足先が伸びていなければならないし、顔の向きも重要です。
普通に飛べば上がるであろう肩も下げなければならず、飛んでいる最中の美しさにも真価が問われます。
さらには着地についても、柔らかいプリエを伴う見た目にも衝撃が感じられない着地が必要です。
エアロビクスやラジオ体操なら何も考えず飛んでればいいだけですが、バレエは一連の動作すべてに神経を使わなければなりません。
このようにより高くジャンプすればいいものではないことは、バレエを始める前の人には肝に銘じてほしいところです。
ちなみに、高さに関しては面白い実験があって、【バレエダンサーと踊りをしてない人が別々に飛んでいるのを見て、どっちが高く飛べていたか】を回答するという実験がありました。
この時は踊りをしてない人のほうが、高さ的にはちょっと高く飛べていたのですが、被験者はバレエダンサーのほうが高く飛べていると答えました。
このことから飛んでいる高さがなくても、美しいフォームで綺麗に飛んでいれば、実際よりも高く飛んでいるように見えることがわかります。
両足を大きく広げたりして滞空時間を長くしたり、苦しさを見せず軽やかに飛んでいるように見せることが、実際より高く飛んでいるように錯覚させているのでしょう。
そう、バレエは
錯覚の美学
でもあるのですね。
もちろんより高く飛ぶことも大事なのですが、それ以外にも飛んでいる瞬間・最中・着地後の姿も大切なことであることを、バレエを始めようとしている人は覚えておいてほしいです。
回転
ここではピルエットを例にとりましょう。
エアロビクスに限らず、ジャズやヒップホップなどでは、たとえばひじが落ちたり、パッセの足がインに入っていても大きな問題ではありませんが、バレエでは違います。
前述の跳躍と同じで、たとえば5回転回れても、美しく回っていなければそれはもうバレエではありません。
パッセの足が外側に開き、アン・ナヴァンのひじの位置が崩れず、肩もしっかり下がった状態でピルエットをしなければならないのがバレエです。
ひどい形でたくさん回転するよりも、1回転でもバレエの形で回るほうが、よりバレエとしてのピルエットに近くなります。
ジャンプと同じでどんなに高く飛べても、フォームが崩れていれば美しくないのと同じですね。
回転もバレエの様式美に従って行わないと、その時点でもうエアロバレエと化してしまいますので注意しましょう。
踊りとエクササイズは別物
上の2つの例でもわかると思いますが、始めに言ったように
バレエは誰かに見せて、魅せる芸術
です。
バレエレッスンで自分流に体を動かすだけでは、バレエっぽいだけで、エアロビクスと変わりません。
バレエを始めたばかりの人は必ずこの基本スタンスを必ず覚えておきましょう。
大人バレエでは、どうしても自己本位的な練習になりがちです。
自分を中心にして踊りを楽しんでは、社交ダンスと変わらないので、今一度
見せて魅せる
ことを意識しながらレッスンに向かいましょう。
また、レッスンだけでなく生の舞台のバレエも見るべきです。
レッスンだけだとどうしても見られるという感覚が薄れてしまうし、練習も振りを覚えるだけの訓練になってしまうので、時間を取って少しでも劇場に足を運んでもらいたいところです。
日本のバレエレッスン人口は世界的に見てもトップクラスなのですが劇場に足を運ぶ人は少なくプロが踊る生のバレエを見ていないので、
エアロバレエが、多くのバレエ教室で、まん延している
実態があります。
学ぶことは真似ることなので、まずはプロのダンサーの踊りをしっかり目に焼き付けて、見る・見られるという相互交流を意識しながら鑑賞すると、それがレッスンにもいい感じでフィードバックされるでしょう。
最後に
なかには割り切って
「バレエしているのは、健康目的だからエアロバレエでいいんです」
と言う人もいましたが、バレエは身体に無理なことを強いている側面もあるので、健康目的なら本当のエアロビクスのほうがより健康にはいいです。
せっかくバレエのレッスンを受けるなら、自分が踊り何かを表現し魅せることを心がけながら練習していくと、心身ともに充実し本当の意味で健康にもなるかもしれませんね♪