「ただし、成人男性の入会はお断りしております」
「現在、成人男性の入会はお断りしております」
「女性専用」

「当スクールでは大人の男性はお断りしています」
「大変申し訳ないのですが、当教室では成人男性の入会はお断りしています」

このようにホームページで、多くのバレエ教室の「男性お断り」という文言を見ていると、どうしても偏見差別のように感じてしまいがちです。

しかし、実際にいろいろな教室を見てきた経験から言うと、その多くは感情論ではなく、経営・設備・運営上の現実的な事情によるもの。

今回は、個人経営のバレエ教室が、成人男性の入会を認めない理由を7つに絞ってご紹介したいと思います。

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1. 更衣室・トイレなどの設備不足

最も物理的で、かつ一番解決が難しい問題です。

多くのバレエ教室は、そもそも女性と女の子だけが通う前提で作られています。

男性用の更衣室や個室、男女別トイレを確保するスペースがない教室も珍しくありません。

「バレエ=女子・女性」という風潮は昔からあり、男子・男性のバレエは超レアな状況がずっと続いてきたので、施設面でも女性専用になるのは当然のことでしょう。

「カーテンで簡易的に区切ればいいのでは?」

と思う人もいるかもしれませんが、それでも抵抗感を持つ女性生徒が出てくるのが現実ですし、そもそもそのスペースさえないことが多いです。

特に共用トイレは、教室側としても非常にデリケートな問題になりますし、男女別に分けることができなければ、男性の入会を認めるという方向にはなかなかいきません。

男性の自分としても、トイレが共用というのは女性に申し訳ない気がしてしまいますし、男女別のトイレがある教室は、男性側としても非常に嬉しかったりします。

2. 生徒(子供)の保護者からの懸念

子供向けクラスが中心の教室では、保護者の目が経営に直結します。

「大人の男性が同じ空間にいること」自体に、防犯面での不安を抱く保護者は、残念ながら一定数存在します。

自分も保護者の女性から白い目で見られるだけでなく、暗に「やめてください」と言われたこともありました。

経営者としては、既存の生徒=主な収益源を失うリスクを避けるため、どうしても保守的な判断にならざるを得ないものです。

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3. 女性生徒の心理的抵抗

大人向けクラスであっても、バレエはレオタードなど体のラインがはっきり出る服装でレッスンを行います。

そのため、「男性の視線があると集中できない」と感じる女性生徒が一定数いるのも事実です。

実際、以前に自分が体験レッスンの問い合わせをした際

「一度、今通っている大人女性の生徒さんたちに、男性が入ってもいいか確認してみます」

と保留にされたこともありました。

これは教室側が、既存生徒との関係を大切にしているからこその対応とも言えます。

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4. 男性向け指導ノウハウの欠如

バレエは、見た目以上に男女で求められる身体の使い方が異なる芸術です。

ジャンプの高さ、回転の軸、着地の衝撃吸収、筋肉の使い方や可動域の考え方も大きく違います。

女性講師一人で運営している教室の場合

「男性特有のダイナミックな動きを、正しく教えられない」

という理由で受け入れを断るケースもあります。

これは差別というより、指導者としての誠実さゆえの判断と言えるでしょう。

実際に男性の指導経験のない先生で、男女のジャンプ力の違いなどを認識できず指導されている方もいました。

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5. トラブル(出入り禁止案件)の過去

過去に一度でも、男性生徒によるトラブルが起きた教室では、その影響が長く尾を引きます。

特定の生徒の出待ち
男女間の人間関係トラブル
無断撮影やSNS問題

こうした経験があると、再発防止のために「男性は一律お断り」という防衛策を取らざるを得なくなるのです。

過去には指導者の女性に傷害を負わせる事件があったりもしましたので、特に女性指導者が運営する教室では慎重にならざるを得ないでしょう。

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6. 教室の「雰囲気(ブランディング)」の維持

教室によっては

「女の子の憧れの世界」
「お姫様になれる場所」

といった世界観を大切にしています。

その場合、大人の男性が入ることで、その独特の空気感ブランディングが崩れてしまうのではないか、という懸念が生まれます。

経営者としては、教室の価値そのものを守る判断でもあります。

それは差別とかどうこうでなく、尊重されるべき教室側の方針と言えるでしょう。

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7. 講師の負担増

少人数で運営している教室ほど、男性が一人入るだけでオペレーションの負担は一気に増えます。

更衣室の使用時間を分ける
レッスン内容を調整する
周囲の生徒への配慮

こうした手間に対して、「それに見合う収入・利益が見込めない」と判断されてしまうのも、非常に現実的な理由です。

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最後に

男性お断りの背景にあるのは、単なる差別・偏見ではなく、

「現在のインフラ・雰囲気・人員では、安全かつ公平に運営する責任が持てない」

という、教室側の運営上の限界であることがほとんどです。

だからこそ、男性が大人からバレエを始める場合は、

「最初から男性受け入れ実績のある教室」
「男性向けクラスを設けているスタジオ」

を探すことが、結果的に一番スムーズで、気持ちよく続けられる近道になると言えるでしょう。