日本のバレエ教室では、男性が極端に少ない——。
以前の記事でも触れた通り、これは「統計上」裏付けられたものですが、日常的にレッスンをしている人なら肌感覚としても理解できる事実でしょう。
では、海外ではどうなのでしょう?
バレエダンサーが単一の職業として成り立っているぐらい文化的に浸透している国なら、一般の大人男性たちの「大人バレエ」も受け入れられているのでしょうか。
今回は海外の男性大人バレエ事情をニューヨーク・ロンドン・パリなどで実際にオープンクラスを受けてきた経験をあわせて、まとめてみました。
日本のバレエ学習者の状況をおさらい
まずは、日本のバレエ事情について振り返っておきましょう。
昭和音楽大学舞台芸術センター(バレエ研究所)「バレエ教育に関する全国調査 2021」
によると、日本のバレエ学習者は以下の通りとなっています。
生徒総数:約 25.6 万人
男性生徒数:約 7,900 人
男性の割合:約 3.1%
男性の割合としては、10年前(2011年)の1.4% からは 3.1% へと一応は増加はしていますが
バレエ教室に生徒50人いれば、男性は1人か2人
という圧倒的に偏りがある状況は変わりません。
普段からバレエレッスンにいそしんでいる大人バレエの方なら「日常のバレエ教室の光景」として納得できるデータでしょう。
アメリカでの男女比は?
では海外ではどうかというと、実は 「バレエ=女性が多数派」 という構造は 日本とほとんど変わりません。
男性が少数派であることは日本だけの特殊事情ではなく、国ごとに多少の差はあるものの、全体としてはよく似た傾向があります。
まずは最新データがあるアメリカから見てみましょう。
参考になるのが、
Zippia「Ballet Dancer Demographics(2025)」
データです。
女性:77.8%
男性:22.2%
これは アメリカの「職業としてのバレエダンサー(Ballet Dancer)」 に限定した統計ですが、アメリカのバレエ人口の特徴を知る手がかりとして有効です。
この数字は「大人バレエ(Adult/Open Class)」の割合そのものではないにしても、プロの世界で男性が約2割であることを考えると、一般の趣味層でも 男性は少数派のままだと推測できます。
割合的には日本のように 3% 前後という極端な男女差ではないものの、実際の男性大人バレエの比率は5〜10%程度と見積もることができます。
つまり、
バレエ教室に生徒50人いれば、男性は5人前後
で、日本ほど極端ではないにしても、アメリカでも男性大人バレエは少数派というのが現実だと言えるでしょう。

※上の写真は「ブロードウェイ・ダンス・センター」に行ってきた時のもの
実際に自分は
Broadway Dance Center(BDC)/ブロードウェイ・ダンス・センター
STEPS on Broadway/ステップス・オン・ブロードウェイ
でオープンクラスを受けてきましたが、クラスレベルによって多少違いがあるものの、全体でみれば女性の比率が高かったです。
またジャズ・ヒップホップ・コンテンポラリーのダンサーが、「基礎づくり」でバレエを受けているケースが多い感じも受けました。
バレエだけを中心にして楽しんでいる方のみに限れば、割合はもっと減るかもしれません。
ニューヨークの大手バレエスタジオでさえ、このような状況なので、地方のバレエ教室ではもっと男性の割合が落ちていくでしょう。


※上の写真は「ステップス・オン・ブロードウェイ」に行ってきた時のもの
アメリカ以外の男女比はどうなっている?
では、アメリカ以外――特にパリとロンドンの状況を見てみましょう。
結論から言ってしまうと、アメリカと大きくは変わりません。
「自由の国アメリカ」ですら男性が少数派である以上、他の国で男性比率が急激に高くなることはまずありません。
都市部ですら少数派なので、地方に行けば映画『リトル・ダンサー』の世界観に近い状況だと考えてよいでしょう。
ロンドンの男女比(大人バレエ)
ロンドンの大人バレエに関する公的統計はありませんが、現地スタジオ・団体・受講者の記録から、おおまかな比率が推測できます。
女性:90~95%
男性:5~10%
生徒が50人いるクラスなら、男性は 5人前後。
実情としてはアメリカとそれほど変わらない男女比であると言えます。
ロイヤル・バレエ団に近いバレエスタジオ『Pineapple Dance Studios』でも、自分が受けた時は男性は 4~5人程度 でした。
別のバレエスタジオ『Danceworks London』では男性は自分一人だけでしたので、ひょっとすると日本並みの低比率のような感触も抱いてしまいました。
パリの男女比(大人バレエ)
パリもロンドンと同じく、公的な全国統計は存在しません。
しかし、スタジオ運営者、経験者の声、記事の記述から、以下のような推定が可能です。
女性:85~90%
男性:10~15%
生徒50人規模のクラスであれば、男性は 7〜8人前後
になります。
アメリカの推定値よりやや多いとぐらいですが、それでも 圧倒的多数は女性です。
パリ・オペラ座「ガルニエ宮」バレエ発祥の地とも言えるフランスでさえ、大人バレエに限れば男性比率が高いわけではありません。
歴史的背景を考えると少し意外で、どこか残念なところでもありますね。
自分はパリでもオープンクラスを受けたことがありますが、受講者約30人中5〜6人はいて、日本よりは多いものの 男性が目立って多い光景ではありませんでした。

※上の写真は「Centre de Danse du Marais」に行ってきた時のもの
最後に:世界的に見ても男性は“少数派”
まとめると、日本ほどではないものの、海外でも男性は明確に少数派です。
ただし、日本ほど極端な男女差があるわけではなく、国によって幅がありそうです。
それでも、文化的背景を考えてもなお、
バレエが「女性が取り組むもの」というイメージは世界的に根強く残っています。
この点は統計的にも、実際に海外でクラスを受けたときの実感としても、共通していると言えるでしょう。
