クラシックバレエには、男女共通のステップが数多く存在します。
しかし実際のレパートリー(作品の振付)を見ていくと、「ほぼ男性専用」と言っていい技巧が存在します。
男性特有のパは、大きく分けると次の2種類に整理できるでしょう。

① 身体的にほぼ男性しかしないもの
② 男性は複数回行うが、女性は1回だけにとどまるもの

今回は、男性バレエの象徴とも言える代表的なステップを10個ピックアップしてみました。
すべての動画はそれぞれのパから始まっているので、参考にしてみてください。

①身体的にほぼ男性しかしないパ

まずは身体的にほぼ男性しかしないパです。
正確に言えば、理論上は女性も可能だが、レパートリー上ほぼ男性専用になっているものですね。
これらは、爆発的筋力・滞空時間・骨盤構造(股関節の可動域と筋力バランス)などの身体的条件から、歴史的にも「男性の技巧」として確立されたものです。

Tours en l’air

フランス語:Tours en l’air
読み:トゥール・ザン・レール
動き:両脚で垂直にジャンプし、空中で軸をまっすぐに保ったまま素早く二回転し、両脚で静かに着地する大回転ジャンプ。

男性のパの代名詞ですね。
男性が1人しかいないバレエ教室では、男性特有のパはそれほどレッスンで取り上げられないものですが、例外的に男女分かれて行う練習がこの「トゥール・ザン・レール」かもしれません。

男性バレエの代名詞「トゥール・ザン・レール(tours en l’air)」とは?男性大人バレエで避けて通れないトゥール・ザン・レールという登竜門トゥール・ザン・レール(tours en l’air)は、いわば男性バレエの代名詞とも言える動きです。 大人バレエのレッスンでは、...

Tours à la seconde(À la seconde turns)

フランス語:Tours à la seconde / Pirouettes à la seconde
読み:トゥール・ア・ラ・スゴンド / ピルエット・ア・ラ・スゴンド
動き:片脚を横に高く伸ばしたまま、もう一方の脚で連続回転する巨大なピルエット。

これも比較的バレエ教室で取り上げられるかもしれません。
女子・女性が「グラン・フェッテ・アン・トゥールナン」をする代わりに、男性はこの「トゥール・ア・ラ・スゴンド」をします。

Révoltade(540)

フランス語:Révoltade
読み:レヴォルタード
動き:助走から跳び、空中で脚を入れ替えながら1回転半ほど回って片脚で着地するアクロバティックなジャンプ。

クラシックというよりアクロバティック寄りのパですが、『海賊』などガラ公演のヴァリエーションで男性が派手に入れることがあります。
後述するバレルターンの締めで使われることが多いです。

Barrel turns(Tours en tonneau)

フランス語:Barrel turns / Tours en tonneau
読み:バレルターン / トゥール・オン・トノー
動き:樽が転がるように身体を傾けたまま横方向に弧を描きながら回転ジャンプを連続する。

これもアクロバティック系で、グラン・パ・ド・ドゥのコーダのマネージュで使われたりします。
ジャンプを得意とする男性ダンサーは、割とこれをチョイスします。

Jeté cloche(Switch leap)

フランス語:Jeté cloche
読み:ジュテ・クロッシュ
動き:脚を振り子のように前後に振りながら跳ぶジャンプで、空中で前後の脚を瞬時に入れ替え、着地側の脚を前にして降りる。

舞台を横断しながら跳ぶため、男性の「空間支配力」を示す代表的ステップです。
女性がしているのもたまに見ますが、『パリの炎』の男性ヴァリエーションのようにジャンプの迫力的においては、やはり男性のパと言えるでしょう。

② 男性が複数回、女性は2回だけ

次に、言葉は共通でも、回数連続数が性差になるパですね。
技の名称は男女共通だが、振付上の要求回数が性差になるという領域です。
持久力・回転力・脚力の差が顕著に表れます。

Double cabriole

フランス語:Double cabriole
読み:ドゥブル・カブリオール
動き:空中で脚を二度打ち合わせるジャンプ。

女性はシングル、男性はダブル以上という構図が典型的な形です。
男性技巧の象徴的ジャンプの一つで、足を打つことにより滞空時間を観客に感じさせる効果があります。

Double assemblé en tournant

フランス語:Double assemblé en tournant
読み:ドゥブル・アッサンブレ・アン・トゥールナン
動き:回りながら跳ぶアッサンブレを二回転分の回転量で行う。

普通のアッサンブレを回りながらするパで、女性も1回転でしたりします。
男性はマネージュで連続して2回転を行うこともあり、観客から歓声が沸くところです。

Double saut de basque

フランス語:Double saut de basque
読み:ドゥブル・ソー・ド・バスク
動き:動作足をジュテしながら空中に投げ上げ背中を観客に見せるように半回転、次の半回転で軸足をパッセにし、動作足で着地する。

『白鳥の湖』のパ・ド・トロワのコーダで女性がマネージュでしたりしますが、これも男性がダイナミックに2回転でおこなうイメージが強いパです。
『ドン・キホーテ』の「バジルのヴァリエーション」など、片足パッセで宙を舞っている姿は見応えがあります。

Entrechat six

フランス語:Entrechat six
読み:アントルシャ・シス
動き:空中で脚を三回打ち替えるジャンプを連続して行う。

これも女性も単体でやることがありますが、高さに余裕のあるアントルシャ・シスならやっぱり男性のパと言い切ってもいいのかもしれません。
『ジゼル』の最後の方にあるアルブレヒトの連続アントルシャ・シスは心肺機能的にも、男性しかできないものと言えるでしょう。

Coupé jeté en manège

フランス語:Coupé jeté en manège
読み:クペ・ジュテ・アン・マネージュ
動き:クペからジュテをつなげ、円を描きながら連続ジャンプで舞台を周回する。

舞台全体を支配する「男性的空間表現」の象徴的パで、男性ヴァリエーションの踊りの最後によく出てきます。
これも大人バレエクラスでもたまに男性のみで練習したりすることもあります。

最後に

大人バレエの世界では、男性は圧倒的な少数派です。
だからこそ、これらの大技は視覚的にも心理的にも大きく注目されるところです。
現実的には、大人バレエのレッスンで触れるのは「トゥール・ザン・レール」くらいかもしれません。

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でも、バレエの男性技巧の世界は本来、ダイナミックで、身体能力の極限を試す領域です。
もし機会があれば、ぜひこれらの技にも挑戦してみるのもいいでしょう。
「跳ぶ」「回る」「空間を支配する」――それこそが、クラシックバレエにおける男性ダンサーの原初的な役割なのです。