ロンドンで見た「着地の美学」——バレエレッスンに活きるプリエの真価
以前の記事で、ロンドンでロイヤル・バレエ団による『くるみ割り人形』を鑑賞したことを書きましたが、ロンドンの舞台で出会ったのは、華やかな跳躍や回転だけではありませんでした。
むしろ心を奪われたのは、そのすべてを支えている“静かな動き”――プリエです。
一見するとシンプルで、レッスンの最初に何気なく繰り返しているこの動き。
けれど一流のダンサーたちは、そのプリエによって踊りの質そのものを変えていました。
今回は、ロイヤル・バレエ団による『くるみ割り人形』の舞台から見えてきたプリエが踊りをどう変えるのかという視点を、自分のレッスンへの気づきとともに綴ってみたいと思います。
「ただ曲げる」ではない——プリエの本当の役割
プリエは、レッスンの最初に出てくる最も基本的な動きです。
一見すると「膝を曲げるだけ」のシンプルな動作に思えるかもしれません。
しかし、このロンドンの舞台を目の当たりにし、改めてプリエの機能を痛感しました。
プリエは——
✅ジャンプの衝撃をやわらかく吸収し
✅次の動きを生み出すエネルギーとなり
✅すべての流れを途切れさせない
そんな、踊りの核とも言える役割を担っていました。
ダンサーたちは床に降り立つたびに、外へ向かっていたエネルギーを、内側へと静かに収めていきます。
その繊細なコントロールがあるからこそ、どんなに大きな跳躍も荒々しさを残さず、自然に次の動きへとつながっていくのだと感じました。
跳躍よりも語るもの——着地の美学
特に印象的だったのは、跳ぶこと以上に、着地が踊りを語っていたという点です。
プリエの深さ、タイミング、そして静けさ・・・。
そのすべてが揃った瞬間、舞台に美しい“間”が生まれます。
その“間”があるからこそ、躍動感はより際立ち、同時に静寂の美しさも引き出されていました。
空ではなく、床から生まれる芸術
ロンドンのひんやりとした夜気の中、劇場を後にしながら、ふと思いました。
バレエは空を飛ぶ芸術のように見えて、実は——地面との対話の芸術なのかもしれない。
それなら、その対話の中心にあるのがプリエと言えるでしょう。
地味で目立たない基礎の動き。
けれどそこには、踊りのすべてが詰まっているのだと、改めてロイヤル・オペラ・ハウスを後にしながら実感しました。
