バレエ『白鳥の湖』第13曲はこんなに違う!?原曲と1895年版で曲順を比べてみた!白鳥たちの一連の踊りの配置変化について
『白鳥の湖』の第13曲は、個性のある曲が集まっている、白鳥たちの一連の踊りです。
「4羽の白鳥の踊り」や、オデットと王子の「グラン・アダージョ」など、作品を代表する名場面が次々と登場することで知られています。
ところが、この第13曲。
チャイコフスキーが作曲した原曲と、1895年にプティパとイワノフによって改訂された版では、踊る順番がかなり違います。
今回は、今後それぞれの踊りを詳しく見る前に、まず第13曲全体の配置がどのように変わったのかを見てみましょう。
※ここでの動画はすべてNo.13に当たる部分から始まるように設定してあります。
原曲の第13曲は、こんな順番だった!
まずはチャイコフスキーの原曲です。
原曲の第13曲「白鳥たちの踊り」は、全部で7曲の構成になっています。
それぞれを見てみると
a. Tempo di valse「白鳥たちのワルツ」
b. Moderato assai「オデットのソロ」
c. Tempo di valse「aのワルツの繰り返し」
d. Allegro moderato「小さな白鳥たちの踊り(4羽の白鳥の踊り)」
e. Pas d’action:Andante – Andante non troppo「オデットと王子のパ・ダクション」
f. Tempo di valse「大きな白鳥たちの踊り」
g. Coda:Allegro vivo「コーダ」
という流れです。
現在の舞台を見慣れている人にとっては、ちょっと意外な順番ではないでしょうか。
特に注目したいのが、b. オデットのソロがかなり早い段階に登場すること。
そして、そのあとにc. ワルツの繰り返しが入り、そこから4羽の白鳥へと続いていきます。
1895年版では、こんな並びに!
1895年の蘇演では、この第13曲が大きく組み替えられました。
現在よく知られている1895年版の第13曲「Grand Pas des Cygnes(白鳥たちのグラン・パ)」では、原曲の各部分を対応させると
a → e → d → f → b → g
という順番になります。
つまり
a. 白鳥たちのワルツ
↓
e. オデットと王子のパ・ダクション(グラン・アダージョ)
↓
d. 4羽の白鳥の踊り
↓
f. 大きな白鳥たちの踊り
↓
b. オデットのヴァリエーション
↓
g. コーダ
という流れです。
原曲のc. Tempo di valse(ワルツの繰り返し)は、1895年版では削除されています。
現在おなじみの「白鳥たちのグラン・パ」は、こうして見ると、原曲とは違った構成になっていることが分かります。
現代ではほぼすべてのバレエ団がこの曲順を踏襲しているので、この配置転換は地味に構成に多大な影響を与えたと言えるでしょう。
曲順を入れ替えることにより「グラン・パ」形式に近くなった
原曲では、a → b → c → d → e → f → gだったものが、1895年版ではa → e → d → f → b → gとなりました。
e. オデットと王子のパ・ダクションが前のほうへ移動し、逆にb. オデットのソロが後半へ移動しています。
その間には、d. 4羽の白鳥とf. 大きな白鳥という白鳥たちの踊りが並びます。
こうして現在よく上演されている、ひとつのまとまった「グラン・パ」らしい構成が作られました。
さらに、原曲では途中に入っていたc. Tempo di valseが削除されたことで、全体の流れもすっきりしています。
つまり1895年の改訂は、単なる「曲順の変更」というより、舞台上で白鳥たちの踊りをより区別して見せるために、第13曲そのものを再構成したと考えると分かりやすいでしょう。
原曲と1895年版の曲順比較 一覧表
| 番号 | 原曲 | 1895年版 |
|---|---|---|
| ① | a. Tempo di valse(白鳥たちのワルツ) | a. Tempo di valse(白鳥たちのワルツ) |
| ② | b. Moderato assai(オデットのソロ) | e. Pas d’action(オデットと王子のグラン・アダージョ) |
| ③ | c. Tempo di valse(ワルツの繰り返し) | 削除 |
| ④ | d. Allegro moderato(4羽の白鳥の踊り) | d. Allegro moderato(4羽の白鳥の踊り) |
| ⑤ | e. Pas d’action(オデットと王子のグラン・アダージョ) | f. Tempo di valse(大きな白鳥たちの踊り) |
| ⑥ | f. Tempo di valse(大きな白鳥たちの踊り) | b. Moderato assai(オデットのヴァリエーション) |
| ⑦ | g. Coda(コーダ) | g. Coda(コーダ) |
※番号①〜⑦は、原曲の曲順を基準にした比較用の番号です。1895年版の実際の演奏順は、①→②→④→⑤→⑥→⑦となり、原曲の③「ワルツの繰り返し」は削除されています。
最後に:CDを買うときはちょっと注意!
ここで一つ、CDを購入するときにも注意したいポイントがあります。
『白鳥の湖』のCDなら、どれを買っても同じ第13曲が聴ける――と思ってしまいがちですが、実際には、どの版・どの楽譜を使用している録音なのかによって、曲順やカット、構成が異なる場合があります。
特に、「発表会で今度『白鳥の湖』をやるから、前もって予習しておきたい!」という人は、CDの曲目だけでなく、原典版なのか、1895年版を基にした録音なのかを確認してから購入するのがおすすめです。
※下の動画は原曲版のNo.13
『白鳥の湖』は、同じ「第13曲」でも、聴く版によって音楽の姿が違うことを知っているとCDを買い直す必要がなくなるでしょう。
またチャイコフスキーが最初に意図したとおりの曲順で聞くのも、また違った視点で『白鳥の湖』を楽しめますので、ぜひ一度は聞いてみるのもいいかもしれませんね。
