バレエ

結局「ジゴーニュ小母さん」って何者なの??『くるみ割り人形』の「ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)」について

今回は『くるみ割り人形』の第2幕のディベルティスマンの一つ

「ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)」

で登場するジゴーニュ小母さんにフィーチャーしたいと思います。

他のディベルティスマンと同様、この踊りにも様々な演出がありますが、多くはジゴーニュ小母さんが履いている大きなスカートから子供たち(子役ダンサー)が出てくる振りが一般的によく知られています。

また、ジゴーニュ小母さんは男性が女装して演じることも多く、ディベルティスマンの中ではひときわコミカルな場面ともなっています。

ここでは、この謎の女性が何者なのかを説明していきたいと思いますので、踊りの参考にしてもらえればと幸いです。

「ジゴーニュ」には「子沢山」の意味がある!

まずジゴーニュ小母さんって何者かというところからいきましょう。

ジゴーニュは固有の名前ではなく、フランス語で「入れ子式の」という意味があります。

gigogne
[形] 入れ子式の
出典 プログレッシブ 仏和辞典 第2版

この意味から派生して、大きなお腹の中に子供がいるということになり、さらに子沢山という意味につながっています。

言ってみればジゴーニュ小母さんというのは

子供がたくさんいる小母さん

ということになるのですね。

多産であることから、多くの演出ではジゴーニュ小母さんのスカートの中から、子供がたくさん出てきて踊ると言う演出につながっています。

実際にフランスの童話作家であるセギュール夫人という人は、子沢山であったため夫からジゴーニュ小母さんとあだ名で呼ばれていたそうです。

ジゴーニュ⇒入れ子式⇒子沢山

ジゴーニュ小母さんは「マダムボンボニエール」とも呼ばれる♪

この踊りは、他にマダム・ボンボニエール(madame bonbonniere)と呼ばれることありますが、この名称もジゴーニュ=子沢山と同じ発想となっています。

bonbonnière
[女]ボンボン入れ;[話]小ぎれいな家,しゃれたアパルトマン.
出典:ポケットプログレッシブ仏和・和仏辞典 第3版

上にあるように「ボンボニエール」はボンボン(砂糖菓子)を入れる容器の意味があり、そこからキャンディーボンボン扮する子供たちがマダムボンボニエールから登場するという演出につながっています。

ちなみにボンボンはフランス語で「良い」を意味する形容詞bonを2つ重ねた単語で、ナッツを砂糖で包んだドラジェなどキャンディ状の菓子の総称です。

『くるみ割り人形』の第2幕はお菓子の国という設定なので、マダムボンボニエールは物語の流れにマッチしたキャラクターと言えそうですね。

最後に

この「ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)」は、バレエの発表会で児童クラスの子供たちが可愛らしく踊ることが多く、ある意味、子供の保護者には一番の見せ場となるところです。

名前の由来を知ることで、ジゴーニュ小母さんというキャラクターが単なる奇抜な存在ではなく、フランスの文化的背景や「お菓子の国」の世界観と深く結びついていることがわかります。

ジゴーニュ小母さん(またはマダム・ボンボニエール)は、多産や豊かさの象徴として、作品に温かみを添えているのです。

『くるみ割り人形』を鑑賞する際は、こうした背景を踏まえてジゴーニュ小母さんを見れば、この踊りの奥深さを感じることができるでしょう。

ポイント 内容
「ジゴーニュ(Gigogne)」の意味 フランス語で「入れ子式の」
「入れ子式」からの連想 – 大きなものの中に小さなものが収まる構造
– 入れ子式の箱や家具のように、親の中に子供がいるイメージ
「多産」や「子沢山」への発展 – 大きなお腹の中に子供がいる=子沢山の象徴
– そこから「ジゴーニュおばさん=子沢山の女性」
バレエの演出との関係 – 大きなスカートの中から子供たちが登場する演出につながる