以前、「ひがし茶屋街」の記事で『ラ・バヤデール』(La bayadère)金の像(Golden Idol)」の踊りについて触れました。
金箔が有名な金沢と、全身が黄金に輝く「黄金の像(Golden Idol)」は、どこか不思議な共通点があります。

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今回は、この印象的な黄金の像(Golden Idol)の踊りをもう少し掘り下げてご紹介します。
これから鑑賞する方や、「いつか踊ってみたい!」という男性大人バレエの方にも参考になれば嬉しいです。

「黄金の像(Golden Idol)」の踊りとは?

黄金の像(Golden Idol)の踊りは、『ラ・バヤデール』の中でも特に印象に残る男性ヴァリエーションです。
版によって登場する場面は異なり

ソロルとガムザッティの結婚式(婚約)の祝宴
もしくは
最終幕・神殿の場面(マカロワ版など)

で踊られることが多く、黄金の偶像(神像)が踊り出すという余興的な(あるいは幻想的な)演出になっています。

実はこの踊り、最初から『ラ・バヤデール』にあったわけではありません。
1948年、振付家ニコライ・ズブコフスキーが『ラ・バヤデール』へ新たに加えたもので、音楽はミンクスが以前に作曲したバレエ『パピヨン(Le Papillon)』「ペルシャ行進曲」を転用したと言われています。

バレエでは、このように別作品の音楽を取り入れることは決して珍しくありません。
例えば『白鳥の湖』でも、現在ロシアで上演されている版には、チャイコフスキーの別作品から編入された楽曲が3つ含まれています。
その3つのうちで有名どころは、コンクールでもよく踊られる「黒鳥のヴァリエーション」で、チャイコフスキーの別の曲「ピアノのための小品集」OP.72-12「いたずらっ子」をリッカルド・ドルゴが編曲し、追加曲として踊りに使っています。
このように黄金の像(Golden Idol)も、後世の改訂によって生まれた追加の踊りなのです。

「黄金の像(Golden Idol)」の踊りの特徴3選

ここから「黄金の像(Golden Idol)」の踊りの特徴を3つに絞って見ていきましょう。

①見た目
②動き
③音楽

に分けて見ていきたいと思います。

①「黄金色」の見た目のインパクトは圧倒的

この踊りを初めて観た人がまず驚くのは、やはりその姿でしょう。
なにせ全身が黄金色・・・。

身体も顔も金色に輝き、衣装も黄金を基調としています。
舞台照明を浴びると、神殿の像が動き出したような神秘的な存在感があります。

一方で、音楽は意外にも軽快で親しみやすく、どこかポップな印象。
この

「神聖な黄金像」×「軽やかな音楽」

というギャップも、この踊りならではの魅力です。

②非クラシックバレエの「変な」動き

また、にも特徴があります。
指先は仏像が印を結ぶように丸く輪を作り、手首も独特に曲げられています。
細かなジャンプを繰り返しながらも、指先までは常に彫刻のような美しさを保たなければならず、高い技術と表現力が求められます。

この指先の輪っかを真似ている♪

また女性がトゥシューズで行うようなパ・ド・ブレの動きや、妙にアティチュードの形が強調されるなど、よく見かける男性ヴァリエーションの踊りとは一線を画しています。
それ故にコンクールの課題曲として取り上げられることは稀ですが、それぐらい特徴のある踊りと言えるでしょう。

③珍しい「5拍子」の音楽

黄金の像(Golden Idol)のもう一つの特徴が、5拍子で書かれていることです。
クラシック音楽では2拍子・3拍子・4拍子が圧倒的に多く、5拍子は珍しい存在です。

四分音符を1拍として1小節に5拍入る変拍子(5/4拍子)

バレエ音楽では『眠れる森の美女』のサファイアのヴァリエーションも5拍子として知られています。
この2曲は特にクラシックバレエ的な変拍子として有名ところでしょう。

とはいえ、踊る側はそれほど複雑には感じません。
どちらの曲も小節の頭がはっきりしているため、レッスンでは細かく「1・2・3・4・5」と数えるよりも

「1小節で1カウント」

という感覚で踊ることが多く、意外と身体に入りやすい音楽です。
だからこそ、5拍子ならではの独特な雰囲気を持ちながらも、踊りやすさがしっかり考えられています。

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黄金の像(Golden Idol)には長い版短い版があります。
短い版では、一つのヴァリエーションとしてコンパクトにまとまった曲になっています。

一方、長い版では黄金の像だけでなく、周囲にインド人を思わせる子役や、寺院の舞姫が黄金の像の周囲で踊ったりします。

私のおすすめは、やはり熊川哲也さんの黄金の像(Golden Idol)。
驚異的なジャンプ力はもちろんですが、それだけではありません。
全身から放たれる黄金像らしい存在感、そして指先まで神経が行き届いた美しいラインは、一見の価値があります。
黄金の像(Golden Idol)踊りのすごさがダイレクトに伝わってくる踊りです。

最後に

男性ヴァリエーションは、作品によって違いはあるものの
「跳ぶ」「回る」
という技巧が中心になることが多く、どうしても似た印象になりがちです。
そんな中で黄金の像(Golden Idol)は

全身黄金色という強烈なビジュアル
仏像のような独特の腕や指先
珍しい5拍子の音楽
彫像が命を得たような世界観

と、他の男性ヴァリエーションにはない個性を持っています。

そのため、「いつかこの役を踊ってみたい」と憧れる男性ダンサー男性や大人バレエの方も少なくありません。
技術だけでなく「人間ではなく黄金の偶像を演じる」という表現力も求められるこのヴァリエーション。

『ラ・バヤデール』を鑑賞するときは、ぜひジャンプや回転だけでなく、金色に輝く姿、仏像のような指先、そして5拍子が生み出す独特のリズムにも注目してみてください。
きっと、この踊りがなぜ長年愛され続けているのか、その魅力をより深く感じられるはずです。

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