バレエ

映画『リトル・ダンサー』における不自然なバレエシーンについて:バレエ学習者の視点から映画を見るとこうなります!

今回は映画『リトル・ダンサー』の中に出てくるバレエレッスンの不自然なシーンについてお話ししたいと思います。

『リトル・ダンサー』はバレエが好きな少年ビリー・エリオットを通して、自分らしく生きることの重要性を表現した素晴らしい作品ですが、バレエのレッスンにシーンに関しては、バレエ関係者にとってはリアルさに欠けると思われる場面が少なからずあります。

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映画もバレエも好きだからこそ、ちょっと気になる不自然なバレエシーンについてのお話しなので、バレエ関係者には共感できる記事かもしれません。

またバレエをあまり見たことないけど、映画には感動したという方には、バレエの奥深さを記事を通して知っていただければ幸いです。

映画自体は感動的なストーリーですし

バレエを知らなくても十分見る価値のある映画

ですが、もう少しバレエについて知りたいという方にオススメの内容ですよ。

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こんな人にオススメ

・映画の中の俳優さんのバレエ演技ってどうなの?

・バレエのレッスンって映画みたいなの?

・映画見てバレエに興味を持ったのでレッスンの内容を知りたい!

不自然①チュチュを着ながらのレッスン

映画では、レッスン場所が体育館のフロアになっています。

町で行われている炭鉱ストライキの関係で、いつものレッスン場所が使えなくなっため、臨時的に体育館を使っているという設定です。

その設定自体も、体育館の床は滑りやすくあまりレッスンに適した場所ではないと疑問を持つ場面ですが、それより生徒たちがチュチュを着てレッスンをしている光景には違和感を覚えました。

普通なら身体が見えやすいようにレオタードを着てレッスンをするものです。

レオタードだと、生徒が正確な体の使い方をしているか、してないかわかりやすいからですが、指導する上で股関節付近が見えなければ、指導者側からは指導しづらいものです。

大人バレエクラスなら、チュチュではないですがスカートを履いたりしますし、もしかして教室によって本番前はチュチュに慣れるために着てレッスンをするところもあるかもしれませんが、映画内ではそんな感じでもないのでバレエ関係者にはちょっと違和感がある光景でした。

「ドガの踊り子」の絵でも描かれているように、昔のバレエレッスンならあり得るかもしれないですが、現代だとチュチュっぽいもの着てのレッスンはかなり少数派でしょう。

映画の演出上、レオタードよりもチュチュを着ている方がバレエ感は出るので、映画監督はヴィジュアル的なものを優先したのかもしれませんね♪

他にもバーに人が密集しすぎのような気がしましたが、お金がなくて長いバーが買えないのでそうなったと、自分を納得させました(笑)

不自然②ウィルキンソン先生のあまりに雑な指導

ウィルキンソン先生はタバコを吸いつつ、時には悪態をつきながらバレエレッスンをしています。

タバコを吸いながらのレッスンはもちろんリアリティーはありませんが、悪態をつきながらレッスンする先生は

日本でもそれなりに見てきましたので、残念ながら自然

かと思います。

それより不自然なのは、生徒への指導です。

一応「お尻を締めて!」などよくある指導を少しはしていますが、生徒が膝を伸ばし切れていなかったり、足がアンドゥオールされてないのを注意しないのは、バレエレッスンを日々している人間にとっては不自然極まりないです。

先生はカウントしているだけで、赤丸の間違い箇所を何も注意しない・・・。

周りの生徒も総じてバレエの基本がまったくできていないので、指導も生徒もダメという言う意味では映画的なリアリティーはあるのですが、ウィルキンソン先生はロイヤルバレエにコネがあるぐらい実力ある立場の設定みたいなので、指導が普通では考えられないぐらい雑すぎるのは矛盾しているように見えました。

不自然③ビリーの練習や踊りを見て、まったくバレエの才能が感じられない

一応主人公ビリーは才能あふれる少年の設定ですが、映画を見ててその動きになかなか

バレエの才能が感じられません。

バレエは奥深い芸術なので、レッスンや踊りの演技は、バレエレッスンを日頃から受けていないと難しいものです。

一応、頑張ってバレエの演技をしようとしているのは伝わってきますが、バレエレッスンを毎日しているバレエ学習者にはちょっと物足りない演技と感じてしまいます。

例えば、デヴェロッペの練習のところとかは、膝も足先も伸びてないし、足も5番ポジションにしっかり入っていません。

アンバーも正しいポジションにないし、アラスゴンではひじが落ちています。

背中もハムストリングスも硬そうで、柔軟性もあるとは言えないです。

アンオー・ルルヴェのところも引き上げがなく、ただ振りをなぞっているだけで、正直有益なレッスンをしているとは言い難いです。

ウィルキンソン先生も振りの指示だけで、バレエの基礎的なところを何にも指導しないのは、実際のレッスンと比べると非常に違和感を感じます。

バレエのシーンは、アップを多用してバレエ経験者を使えばよかったのにと思いますが、長回しで踊るシーンもあるのでちょっと難しかったのでしょう。

ただダンス自体は踊り慣れているみたいで、感情むき出しでタップをしながら踊り狂うシーンは迫力があって素晴らしいと思いました。

ビリーのバレエレッスンする場面を見て思うのは、バレエは完全な様式美でやはりちょっと経験してみただけの役作りでは演技できないものだなあと、改めてバレエの芸術性について考えさせられました。

ちなみにデヴェロッペの模範演技とポイントは、下の美しい動画を参照して頂ければと思います。

不自然④バレエ学校の試験に適した踊りを披露していない

バレエ学校の入学試験ですが、普通なら基本的なバーレッスンやセンターレッスンがあり、ヴァリエーションを踊るものだと思いますが、それらがまったくないのはおかしいです。

バーの基本的な動きは上映時間の都合上、省略されていると解釈できても、一曲踊る場面でバレエ作品でないものを踊っているのは現実的ではありません。

クリスマスの日に父親の前で踊ったものと同じ曲ですが、あまりバレエ音楽に向いた曲とも言えず、実際の入学試験ではちょっと考えられない光景です。

昔大ヒットした『フラッシュダンス』で、バレエ学校の試験であるはずなのに、なぜかブレイクダンスを女性主人公が披露していたのと同じぐらい変な場面でした。

あっ、ちなみに『フラッシュダンス』は好きな映画ですよ!

あくまでもバレエの視点から見ると、突っ込みどころ満載というだけですからね♪

映画を見ている最中は、いちいち細かいことは気にしません☆

最後に

映画の中で唯一流れるバレエ音楽が「白鳥の湖」だったことを考えると、映画の作り手としてはバレエについてはあまりフォーカスせず、自分らしく生きることの大切さや家族愛をテーマに置きたかったのでしょう。

確かにバレエばかりの場面が多い映画にしてしまうと、物語のテーマとなる箇所がぼやけてしまうので、バレエはあくまでも物語の進行手段でよかったのかもしれません。

映画を見返して改めて思うのは、素晴らしいストーリーに感動すると同時に、やっぱり

バレエの演技はかなりの経験者でなければ難しい

と思いました。

映画『花とアリス』では、蒼井優さんがバレエをそれなりにきれいに踊っていましたが、彼女は実際にバレエを子供の時から継続的にやっていたからこそ演じることができたと言えるでしょう。

ただビリー演じるジェイミー・ベルの演技も頑張っていて、バレエの場面はちょっと難しくても、友達や家族との対話の場面やタップで踊るシーンは素晴らしかったです。

映画に感動した方は、ぜひ今度はバレエの視点に立って鑑賞してみるのもいいですよ!

ちょっとでもバレエに興味があったら、今度はあなたがバレエレッスンを始めてみてみてくださいな♪

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