今回は大人クラスでバレエをしている男性が、男女混合のクラスの時に、センターレッスンの最後の方にある「グランワルツ」(大きなジャンプ)で直面する問題を5つ紹介したいと思います。
バレエ学習者人口の97%を女性が占める社会において、大人からバレエを始めた男性は少数派の存在です。
なので、たいていの大人バレエクラスでは、男性はいたとしても多くて1人か2人ほどです。
もちろん教室によってはBOYSクラスがあったり、まれに男性だけの大人クラスも都内にはあったりはしますが、普通はバレエ教室で大人クラスに男性がいればかなり珍しいほうでしょう。
そしてレッスンでは、特に「グランワルツ」の時に女性との身体的差異から、男性はけっこう難しい状況に置かれたりします。
記事では男性の大人バレエについての話ですが、女性の方にもこういう事情があるのを知っておいてもらえればと思います。
また指導する側にも、グランワルツの男性大人バレエあるあるの状況を知ってもらえればありがたいです。
①男性にとってはグランワルツの曲が早すぎることがある
特に女性の先生が指導する時で、女性生徒が多数を占めていてるレッスンでは、グランワルツの曲が男性にとっては早すぎる場合があります。
曲が早いと動きを音に間に合わせるため、必然的にプリエを不自然なほど浅めにしなければならなくなります。
すべての曲が男性に向いてないという訳ではないのですが、かなり早い曲だと、プリエをうまく使うことができず、最悪の場合怪我につながることもあります。
先生によっては男性と女性で分けて、男性の場合は音楽をゆっくりな曲に変えてくれたり、CDデッキの操作でテンポを変えてくれたりするのですが、クラスで女性が多数派だと、変える手間もあるしそのまま流してレッスンをすることも多いです。
またクラスに男性が1人で他は女性の場合は、男性の指導者であっても、音楽を変えたりせずにそのままの曲でやることもありました。
レッスンの時間も限られているし、男性と女性を分けてCDを変えたりするのも煩わしいかもしれません。
②女性とぶつかりそうになるので、力を抜くこともある
プロのバレエ団のような広いスペースのあるバレエ教室もありますが、ほとんどのバレエ教室ではそこまで広さのあるスペースはありません。
なので、3~4人のグループでグランワルツをするとけっこう壁際ギリギリのところまでいってしまうことも多いです。
その中で男性が混じって普通にグランジュッテなどすると、広さによっては女性とクラッシュしそうになることもあります。
そんな時は、男性側はグリッサードやジャンプなどで少し力を抜いてグランワルツをおこなうこともあります。
まったく練習にならないわけではないですが、周囲の女性を気遣うあまり自分の動きに集中できないので、少し不完全燃焼でグランワルツが終わることになります。
③男性に後ろで大きくジャンプされるのを嫌う女性もいる
グランワルツができる十分な面積のある教室で、テンポも男性がジャンプしやすい曲でも、女性によっては男性に後ろでガンガン飛ばれるのを嫌がる人もいました。
すぐ後ろで飛ばれると、後ろから威嚇されているように感じるのか・・・
にらまれたこともあります(笑)
確かに鏡を通して見ると、男女のジャンプの飛距離によっては、女性が体当たりされそうに見えることもあるし、なんか後ろから追い立てられてように感じるかもしれません。
状況によっては、車の「あおり運転」をされているようで、怖さも感じるでしょう。
そうなると②で前述したとおり、男性側が力を抜いて距離を取ってあげることもあります。
④男性用のグランワルツの練習ができない
ここまでは周囲の女性との兼ね合いの話でしたが、女性と一緒にグランワルツをすると、単純に男性特有のジャンプの練習ができないのが、けっこう辛いところです。
例えば同じアッサンブレでも、グランアッサンブレのような大きな動きもできないし、シソンヌなども小さい動きになります。
曲の流れの中で、トゥール・ザン・レールもできないし、2回転のソ・ド・バスクの練習もできません。
海外でレッスンを受けてきた男性の指導者は、男性だけのアレグロやグランワルツの重要性はわかっていて分けてやってくれることが多いですが、女性の指導者はそこまで配慮はしてくれない傾向があります。
女性が多数を占める教室で男1人の場合は、指導する技術や時間の関係上もあってか、男性特有のジャンプの練習は省かれることもけっこう多いです。
⑤男女分けてやってくれても、男性1人の「ぼっちグランワルツ」
曲も男性用のテンポで、男女で分けてグランワルツをやってくれる教室もあるにはありました。
ただそもそも男性はたいてい1人なので、グランワルツではいきなり
単独ライブ状態
になり、けっこうなプレッシャーを受けます(笑)。
上手にできればいいですが、振りが落ちてオロオロしてしまった時には
みっともないことこの上ありません(笑)。
また、1人だと比較する相手がいないのが、寂しいところです。
競争するわけではないですが、複数人の男性がいると比較することができて、もっと飛ぼうという気持ちにもなります。
ライバルがいて一緒に切磋琢磨していくのは、上達へのモチベーションにもなるので、理想的には男性だけのクラスが本来はベストなクラス形態と言えるでしょう。
最後に
大人男性でなく、BOYSがいるジュニアクラスならまだ未来があるので、レッスン内容は異なってくると思いますが、趣味教養レベルでの大人クラスでは、やはり多数派である女性の動きが優先されるのはしょうがないことかもしれません。
男性の先生であっても、グランワルツに限らず、女性をメインにしたアンシェヌマンを組むのはよくあることですし、教室のスペースやレッスン時間の制限もありますしね。
男性特有のジャンプなどを練習したい場合は、少ないですが都内の大人男性だけのためのクラスを受講するしかないです。
昭和音楽大学バレエ研究所による「バレエ教育に関する全国調査2021」によると、バレエをする大人男性は確実に増加傾向にあるので、もしかすると大人男性専用の教室やクラスもだんだんと増えていくかもしれませんね。
それまで男性大人バレエの方々は、日々のレッスンを頑張っていきましょう!