バレエ

大人男性バレエのパ・ド・ドゥレッスン:バレエ教室で練習する機会のなさについて

今回は、大人からバレエを始めた男性がレッスンをするにあたって、パ・ド・ドゥの練習をする機会が少ないという問題を取り上げます。

普通のクラスレッスンでさえ、大人男性はお断りのバレエ教室が多い現実の中、さらにパ・ド・ドゥ(女性と組んで踊る)のレッスン開催を掲げている教室はほとんど聞きません。

もちろんBOYSクラスやプロを目指しているクラスは練習の機会はありますが、大人クラスでの大人同士のパ・ド・ドゥクラスは、そもそも大人からバレエを始めた男性が少ないので、一コマのレッスンとしては成り立ちにくいと言えます。

この記事では、大人男性がパ・ド・ドゥの練習をするのが難しい実態と、大人男性がパ・ド・ドゥをするメリットをお伝えしたいと思います。

大人男性はパ・ド・ドゥの練習をする機会が少ない

通常のバレエレッスンはバーとセンターの90分間なので、なかなかパ・ド・ドゥの練習までできないものです。

男性講師の場合、たまに通常レッスンの中で、ピルエットプロムナードをすることもありましたが、それもごくたまに気が向いた時?だけでした。

いずれにしても継続的にパ・ド・ドゥクラスとしての時間枠はありませんでした。

やる機会があるのは、たとえば発表会の自分の役で少し女性と絡む場合で、ピルエットやプロムナードがあったりする時に練習をするぐらいです。

それでも、先生は他の生徒たちの指導をしたりしなくてはならないし、パ・ド・ドゥに関してはゲストダンサーと踊る子を中心に見るために、十分な指導をしてもらう時間はなかなかありません。

たまにゲストダンサーが、大人男性がパ・ド・ドゥの練習をしているのが珍しいのか教えてくれたりしましたが、ゲストダンサーの方も本来組む女の子と練習しなくてはなりません。

いずれにしても、月に〇回はパ・ド・ドゥクラスを設けているみたいなことはないですし、そのため大人男性がパ・ド・ドゥの技術を系統だって学ぶことはほとんどないです。

女性側からパ・ド・ドゥを組むのを、嫌がれたりすることもある

発表会の中で、少しピルエットやプロムナードがある場合でも、誰とパ・ド・ドゥを組むか配役が難しかったりすることもあります。

前に大人クラスの女性でパ・ド・ドゥができるレベルにある人が、素人の男性よりもゲストダンサーと踊りたいらしく、大人からバレエを始めた自分と組むのを拒否したことがあります。

あとから先生にこっそり聞かされた話ですが(笑)

ある程度踊ることのできる女性は、やはりイケメンで指導が上手で自分を的確にサポートしてくれるゲストダンサーと練習したいし、本番でも一緒に踊りたいのは当然でしょう。

ただ、そうなるとますます男性側はパ・ド・ドゥをすることから遠ざかることになり、練習する機会もなくなってきます。

女性はみんなゲストダンサーと組むから、大人男性はパ・ド・ドゥをする機会はなく、したがって練習する必要もないから、男性のためのパ・ド・ドゥクラスも不要ということになります。

女性のためのパ・ド・ドゥクラスは増加傾向にある

一方で大人女性のためのパ・ド・ドゥクラスはけっこう増えたと思います。

大人女性はトゥシューズを履いて男性と組むことに憧れる人が多いのか需要もあり、プロの男性ダンサーを呼んでパ・ド・ドゥクラスを開講している教室は都内に多いです。

昭和音楽大学バレエ研究所の『バレエ教育に関する全国調査2021』でも

「アダージオ(パ・ド・ドゥ)のクラス」は、10 年間で実施率が増加傾向にある。

「アダージオ(パ・ド・ドゥ)」のクラスが増加した背景には、アダージオが女子生徒にとって男性と組んで踊る貴重な機会であり、大人になってからバレエを習い始めた生徒層にも人気が高いことが挙げられる。

とあります。

男性のバレエ学習者人口は全体の3.1%で、そもそも普通のレッスンでも需要がないこともあり、男性大人向けのパ・ド・ドゥクラスなどなかなか成り立たないこともあるでしょう。

ただ大人男性が複数人いるバレエ教室なら、月1回など定期的に大人男性対象のパ・ド・ドゥクラスを設定するのもありかと思います。

次に大人からバレエを始めた男性が、女性と組んでパ・ド・ドゥをできるようになると、どんなメリットがあるかお話しします。

大人男性のパ・ド・ドゥのメリット

教室側のメリット

まず教室側のメリットとしては、単純にゲストダンサーの謝礼費用が浮くことがあげられます。

パ・ド・ドゥクラスの開催で、男性ゲストダンサーをたくさんは呼ぶ必要がなくなるし、クラスの開催数も増やすことができるでしょう。

パ・ド・ドゥクラスの開催数が増えれば、女性生徒のモチベーションそして技術の向上にもつながります。

発表会でも大人男性生徒が、グラン・パ・ド・ドゥなどレベルの高いものは無理でも、簡単なパ・ド・ドゥができれば振付の幅も広がりますし、また大人でもパ・ド・ドゥができるという宣伝にもなります。

バレエの発表会は一般的に女子・女性生徒と男性ゲストダンサーだけみたいな舞台が多いですが、大人男性が加われば見た目にも人数がそろい、さらに見映えがします。

何より自前の生徒ということで、ただ(無料)なのでその分費用が浮くし、相対的に利益率もあがるでしょう。

女性側のメリット

女性側にとっての大人男性がパ・ド・ドゥをできるようになることのメリットは、教室側のメリットと同じで、まず男性ゲストダンサーと一緒に踊る場合の謝礼費用がなくなります。

プロの男性ダンサーに比べれば質は落ちますが、大人男性がある程度パ・ド・ドゥができると、教室自前の生徒なので費用はかかりません。

また、教室にパ・ド・ドゥができる男性大人がいれば、特別レッスンとしてパ・ド・ドゥクラスを開催しなくても、普段のレッスンの延長線上でパ・ド・ドゥの練習をすることもできます。

継続的にパ・ド・ドゥの練習をすることができるようになるので、さらに技術の向上が望めるでしょう。

確かにプロの男性ダンサーと組んで練習するほうが、直接指導してもらえるし、質の高いレッスンができると思いますが、パ・ド・ドゥができる大人男性がいれば、練習回数が増えますし、いざプロの男性ダンサーと組む時にも大いに役立つはずです。

大人男性側のメリット

男性側のメリットとしては、前述の2つのメリットの裏返しですね。

自分がパ・ド・ドゥをできるようになれば、それだけ表現の幅が広がるので、発表会でいろんな役割ができるようになります。

1人で踊るだけでなく、女性と絡みながらいろんな動きができるので、踊りの需要が高まります。

教室側のゲストダンサーを呼ぶ費用や労力の負担軽減にもなりますので、バレエ教室への大きな貢献にもなるでしょう。

また年を取ってからも、ある程度舞台に立つことが可能となります

年齢を重ねるにつれ、特に腰や脚など下半身の老化は著しく進みますが、上半身の衰えは下半身ほど急激には進行しません。

大きなジャンプなど激しい動きはできなくなっても、パ・ド・ドゥの技術があれば、少なくとも女性のサポートをする形でバレエを続けることができますね。

最後に

まだまだ大人の男性はお断りを掲げているバレエ教室が多い現実はありますが、それでもここ数年でだいぶ大人男性を受け入れる教室も増えてきました。

昭和音楽大学バレエ研究所の『バレエ教育に関する全国調査2021』でも、プロの男性バレエダンサーの世界的な活躍が注目することもあってか、男性のバレエ学習者の人口は少しずつですが増加しています。

それに伴ってパ・ド・ドゥができる大人男性も増えてくれば、バレエ界全体が活気づいてくる気もします。

バレエ教室に女性講師だけというところも多いので、すべての教室が男性のパ・ド・ドゥを指導することは難しいかもしれませんが、少しずつでも大人男性がパ・ド・ドゥを練習する機会が増えると、中長期的にはバレエ界の発展にもつながるかと思いますので、ぜひ大人男性のためのパ・ド・ドゥクラスも増えていってほしいですね。