今回はバレエにおける笑顔についてお話ししたいと思います。
いろんなバレエ教室の発表会やバレエコンクールなどを見てきましたが、特に大人クラスの踊りでは笑顔率はかなり低く、仮に10人のグループの踊りだったら、笑えてたのは1~2人ぐらいというパターンが多かったです。
子どもの時にバレエを習っていた再会組や、ダンス経験者などはけっこう笑顔を作れますが、大人からバレエを始めた人には、踊りの最中に笑顔を保っていられるのは難しいことでしょう。
自分は笑顔であるべきシーンなのに、緊張などで笑うことができず踊っている人を
「無表情ダンサー」
と呼んでいますが、できれば表情豊かな人が増えてほしいと思っています。
この記事では、笑顔の重要性をお話しするとともに、笑顔の作り方のポイントやそこから得られるメリットなどをお伝えできればと思います。
バレエにおける笑顔の重要性
ここでバレエにおいて笑顔が重要であることの一例をあげたいと思います。
それは、バレエコンクールである高校生が踊っていた『眠りの森の美女』のオーロラ3幕のヴァリエーションを見た時でした。
その子は、プロもびっくりするほど上手に踊れていたにもかかわらず、緊張のためか顔面が無表情で、せっかくの結婚式のシーンがお葬式のような感じになってしまっていました。
どんなにうまく踊れていても、顔が踊りにふさわしい表情でなければ、踊りそのものが台無しになってしまうことを、改めて思い知らされた光景でした。
たとえ綺麗に踊れてたとしても、顔の表情が死んでしまっていたら、踊り全体がダメになってしまう事例ですが、やはり笑顔は大事なのだなと思えます。
「笑う」のではなく「笑い顔を作る」
大人バレエの方が
「笑顔が大事だってことはわかっているけど、そうは言っても余裕がなくて自然に笑えないよ」
と言ってた人がいましたが、そもそも自然に笑うという発想が間違いなので、まずバレエにおける笑顔の認識を変えましょう。
バレエでの笑顔は、自然に笑うのではなく、笑い顔を作っていると言えるものです。
心の中がどうであるかは関係がなく、辛くても苦しくても、舞台用に笑顔に見せているだけです。
踊りが上手になれば、自然に笑えるようになるというものではありません。
もちろん楽しんで踊っていて、自然と笑みがこぼれるのが理想ではありますが、プロだってたとえばヴァリエーションなどの踊りの終盤は、心の中では苦しいはずですし、素の顔をさらけ出したら苦行僧のような顔が現れるでしょう。
だから自然に笑うという考えは捨てて、顔も振りの一つだと思ってしっかり練習するべきです。
鏡を見ながら手足を動かして振りを覚えるように、踊りに合わせた顔を作る練習をしていかなければいけません。
笑い顔の練習
では、笑い顔を作る練習ですが、今まで習ってきた中で重要だと思ったポイント2点をお伝えします。
顔面筋トレ⇒口角を上げる(上げ続ける)練習をする
まず一つ目ですが、
「口角を上げる」
のを意識して練習するというのがあります。
これがけっこう難しいですよね。
普段から常に笑っているのでない限り、普通は顔の筋肉である表情筋などあまり使うことはありません。
口角を上げることはできても、上げたままを保つのは、筋トレみたいなものなので、かなり顔面に負荷がかかるものだと言えます。
でも、鏡の前で練習して慣れてくると、これがしだいに意識せずにできるようになるものなので、慣れってある意味怖いものです。
ぜひ顔面筋トレを時々して、笑顔を作る筋肉を刺激し作っていきましょう。
家でもできるし、空き時間を利用してもできるので、オススメですよ。
オーバースマイル⇒客席まで届く笑顔を作る
また、練習の際の注意として、普通の笑顔よりオーバーなものを作るといいと思います。
観客も審査員も遠めからあなたのことを見ているので、微笑や半笑いでは、客席に届きません。
間近で見たら
「この人どんだけ笑ってるんだ!」
と突っ込まれるぐらいの笑顔で、ちょうどいいかもしれませんね。
ちょっとやりすぎぐらいの笑顔を作り出していきましょう。
笑顔の付随的効果
ついでに笑顔のメリットを2点紹介しておきます。
笑顔はポジティブな思考を生み出し、緊張した心を静める
表情筋は、感情に密接な脳の神経と繋がっているので、笑顔でいると脳が楽しいと錯覚してポジティブシンキングになりやすいと言われています。
なので、舞台の緊張を緩めるためにも、とびっきりの笑顔でいればリラックス効果となり、いい踊りにつながるでしょう。
踊りにかぎらず、普段から笑顔でいれば前向きな思考でいることができるとも言えますし、この笑顔の錯覚は日常生活でも応用できるかもしれませんね。
笑顔は人に伝染する
また、笑顔は伝染するものです。
人間は、他人の顔の表情に敏感である作りになっています。
心理学の実験で、同じ人の写真でも、無表情なのと笑顔のものでは印象が違ってくる結果が出ています。
心理学を持ち出すまでもなく、日常生活でも笑顔でいる人は素敵ですよね。
なので、練習でも舞台でも、笑顔を保つことは、観客・審査員・さらに周囲とのコミュニケーションにもいい影響をもたらすものです。
最後に
前に台湾の公園で散歩をしていた時、「愛笑倶楽部」という笑うサークルに出くわしたことがあります。
ひたすら集団になって笑い合い健康になろうという目的のサークルで、最初は物珍しく見ていましたが、しだいにこちらも楽しい気持ちになりました。
なので、舞台だけでなく、日常生活や普段のレッスンでも、笑顔でいると、いろんな面でいい効果が期待できると思います。
ぜひ観客を魅了するような笑顔を作る練習をして、無表情ダンサーを卒業しましょう♪