今回はバレエ「ロミオとジュリエット」(以下略して、「ロミジュリ」)を紹介したいと思います。
基本的に以下にあるようなバレエ鑑賞初心者の方向けに話を進めますね♪
①バレエをあまり見たことがない方けど、「ロミジュリ」の物語に興味がある方
②バレエ「ロミジュリ」を久しぶりに見るので、おさらいをしたい方
2020年3月に「ロミジュリ」の映画化が公開されていましたが、実はこれバレエの舞台で公演されている作品の映像化なのですね。
なので、セリフはいっさいなく、すべて踊りやマイム(ボディ・ランゲジーでの意思表現)で物語が進行されます。
映画化された記念に?今回は、バレエの舞台を撮影したDVDの紹介を通して、作品の魅力を紹介していきたいと思います。
バレエ版「ロミオとジュリエット」マクミラン振付
一つの作品には、様々なバレエの振付があります!
バレエ版「ロミオとジュリエット」と言っても、振付家によって様々なバージョンがあります。
フランスのオペラ座が採用しているものだったり、ロシアのマリンスキー劇場だったり国よってもいろいろですし、近年でも新しいバージョンが発表されたりもしています。
なので、タイトルの後ろには必ず「○○振付」「○○版」みたいな感じで誰による振付のものかが明示してあるのが一般的です。
今回はもっとも有名でよく鑑賞されているイギリスのロイヤルバレエ団が採用しているケネス・マクミランという振付家の「ロミジュリ」です。
映画化されたのも、このバージョンのものですね。

無言劇の魅力
シェークスピアの作品をバレエ化するのは、実はとても大変なことです。
当時の演劇というのは、舞台とかではなく野外で行うもので、舞台装置や背景もなく役者の語るセリフのみの構成でした。
キャラクターの言葉を通して、時代背景を理解したり、物語の流れを想像したりして楽しんでいたのですね。
ですから、セリフは物語の進行の核となっているものでした。
バレエは、セリフを取り払い基本的に踊りで物語を作っていくので、観客にメッセージを伝えていくのは、文字に比べれば至難の技でしょう。
しかし、だからこそ、言葉とは違う想像力を働かしながら、自由に物語を解釈できると言え、そこが踊り手の腕の見せ所であり、また見る側の楽しみとも言えます。
ダンサーは、踊りを使って身体で感情を表現し、観客はそこからイメージを膨らませてキャラクターの心情を感じ取ることが、無言劇の大きな魅力となっています。
DVD・CDの紹介
名場面を紹介する前に、DVDとCDの紹介もしておきましょう。
いずれも、アマゾンをはじめとしたネットショップで購入できるものです。
初めて見る方は、やはりケネス・マクミラン版で、おそらく多くのバレエ愛好家に見られているアレッサンドラ・フェリがジュリエットの役をやっているDVDがオススメです!
アレッサンドラ・フェリは当時「踊る女優」とも言われ、可憐な容姿もあってか、ジュリエット役にはビッタリで、しかも当時19歳と、ジュリエットの実年齢(14歳)に近く、彼女の代表作になっています。
CDに関しては、いわゆる著名なオーケストラ・指揮者ではありませんが、踊りに適したテンポで収録されているCDがオススメです。
じつは、同じ曲でも、純粋に聞くだけのクラシック音楽での収録と、バレエで踊るテンポの収録では、かなり違います。
よくあることですが、クラシック畑しか知らない指揮者のバレエ演奏は、かなり踊り手には違和感のあるテンポとなっていて、踊りに合わせられない収録となっているのがほとんどです。
単純に聞き流すには支障がないですが、いずれ生の舞台で鑑賞することも考えて、まだこれから御覧になる方には、ぜひバレエのテンポで音楽を感じてもらいたいです♪
DVD : ケネス・マクミランのロミオとジュリエット
CD : マリインスキー・バレエ ラヴロスフキー版「ロミオとジュリエット」全幕(※今回紹介しているバージョンとは違いますが、曲順はほとんど同じですし、バレエ用の速度で演奏されているのでオススメです☆)


名場面・印象的なシーンをとりあえず3つほど!
騎士たちの踊り(ソフトバンクCMの曲)

このシーン、初めて御覧になる方は、必ずソフトバンクのCMを思い出すかと思います(笑)
昔あったテレビドラマ『のだめカンタービレ』でも流れていたので、聞いたことのある方が多いと思いますが、あの曲は、このバレエ音楽からきています。
マクミラン版では、騎士たちではなく、貴族が舞踏会で踊る勇壮な場面になっていますが、重厚な低音に、怪しげなメロディーが鳴っている印象的なシーンとなっています。
バルコニーのシーン

文学作品においても主人公二人が初めて想いをあかす物語のピークとなる場面ですが、バレエでもここを一番のハイライトにしています。
バレエ愛好家なら、たとえば
「今回のガラで、またバルコニーのパ・ド・ドゥ(2人での踊り)やるらしいよ」
で通じるぐらい有名なシーンで、ガラコンサートでもよく単独で踊られる場面です。
非常に技巧的な踊りの中で、二人の気持ちが近づいていく様子が、繊細に表現されています。
そして、重要なのは、この踊りの中に、すでに悲劇的な結末を暗示していることですね。
ロミオが着ている闇の中にたなびくマントや、ジュリエットの時折見せる初々しいしぐさが、この後の展開を知る観客には、はかない美しさとなって映るかもしれません。

死体のパ・ド・ドゥ
自分は、初めてこの場面をDVDで見たとき、ちょっとひきました(笑)
まあ、「死体のパ・ド・ドゥ」も自分が勝手に名付けたものです(笑)
ジュリエットの死を受け入れることができないロミオが、ジュリエットの死体を抱いて、無理矢理に踊ろうとするのですが、あまり美しいとも言えず、どこか狂気めいたところがありました。
バレエは「白鳥の湖」に代表されるような、美しいものが舞台で踊られるというのが、世間一般の見方ですが、実は必ずしもそうではありません。
特にケネス・マクミランという振付家は、美だけでなく、醜悪も大事にしていて、一般的に汚らわしいもの・忌み嫌うものも遠慮なく表現します。
性暴力を描いた『ユダの木』という作品があるように、時にはダイレクトに社会的なメッセージを送るようなバレエも多くあります。
ちょっとこれは18禁ではないか・・・と思うようなバレエもあるし、明らかに児童には向いてないな・・・という作品もバレエにはたくさんあるので、いずれそういうのも紹介していけたらと思っています。
白鳥だけがバレエではないことを、ぜひ皆さんに知ってもらいところですね。
まとめ
この「ロミジュリ」、自分は4回ほど生の舞台で見ていますが、ある舞台で隣の女性が最後にジュリエットが死ぬシーンで号泣していて、自分ももらい泣きしたのを覚えています。
プロコフィエフの音楽と、演劇の国イギリスが生んだ素晴らしいバレエ作品です。
バレエ初心者の方は、まずは「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」など親しみやすい作品から入るのがいいと思いますが、いずれはこのドラマティック・バレエを見てみもらいたいですね。
この作品に感化されて、自分は以前に「ロミジュリ」の舞台であるイタリアのヴェローナにも行ったことがあるので、いずれご紹介できればと思っています。
「ロミジュリ」は映画や漫画など様々な媒体で表現されていますが、ぜひバレエ版も味わってみてくださいね♪
