今回はバレエ『くるみ割り人形』のあらすじについてのご紹介です。
一口に「あらすじ」と言っても、原作に忠実であるかないか、忠実でないなら物語のどの部分に焦点を当てているかなど、演出によって違いが出てしまうものです。
チャイコフスキーが想定した曲の順番を大きく変えてしまう演出もありますし、子供向けのお話しでもあるのに、最後を悲劇的なストーリーに変えてしまう斬新なヴァージョンもあります。
なので、一概に
「バレエ『くるみ割り人形』はこういうお話しですよ!」
とは完全には言えませんが、ここでは現在よく演出されているオーソドックス形と言えるような『くるみ割り人形』のあらすじをご紹介したいと思います。
他のヴァージョンは基本的にここで紹介するあらすじ内容から派生・発展しているので、バレエ鑑賞の初心者の方はまずここをおさえておくといいでしょう。
バレエ『くるみ割り人形』のあらすじ
第1幕
クリスマス・イブの夜、クララという少女の家では、賑やかにクリスマスパーティが行われていました。
そこにドロッセルマイヤーというクララの叔父さんがやってきて、子供たちに人形をあげたり、風変わりな人形の踊りを見せたりしてくれ、クララにはくるみ割り人形をプレゼントしてくれました。
醜い人形ではありましたが、クララは嬉しそうに人形を抱きしめます。
パーティーが終わり、みんなが静かに眠りにつく中で、クララは広間にあったくるみ割り人形が気になり部屋から降りてきます。
すると12時を告げる時計の鐘の音と共に、クララは突如として人形くらいの小さな体になってしまいます。
そこへねずみの王様とその手下たちが現れ、くるみ割り人形と兵隊人形たちと戦いを始めます。
くるみ割り人形がねずみの王様に倒されそうになる時、クララは機転をきかせて自分の履いているスリッパをねずみの王様に投げつけて、間一髪のところでくるみ割り人形を助け、ねずみ達を一掃させます。
くるみ割り人形から美しい王子に変化したくるみ割り王子は(ねずみの王様の呪いで醜く変えられていた)、お礼にクララをお菓子の国へ連れていってあげることにしました。
その途中に雪が降りしきるところでは、美しい雪の精の踊りを楽しみ、お菓子の国に向かうところで、第1幕の幕は下ります。
第2幕
お菓子の国につくと、女王である金平糖の精が、クララと王子を歓迎してくれました。
金平糖の精に、くるみ割り王子がクララが自分のために危険をおかしてねずみ達から救ってくれた話をすると、金平糖の精はその功績をたたえて、いろんな国の踊りを披露してくれます。
スペインのチョコレートの踊り、アラビアのコーヒーの踊り、中国のお茶の踊り、ロシアのトレパック、フランスの葦笛の踊り、花のワルツなど、特徴的で楽しい踊りが演じられ、最後にくるみ割り王子と金平糖の精が最も華やかな踊りを踊ってくれました。
その後はクララも踊りに加わり、歓迎式が最高潮に達した瞬間に、クララは元にいた家の広間で目覚めて、寝ていたことに気づきます。
くるみ割り人形を手に取り、夢だったことを悟るわけですが、くるみ割り人形に対する愛情はいっそう深まります。
そして夢の中での冒険が、クララをまた一つ大人へ成長させたところで幕は下ります。
バレエ『くるみ割り人形』の基本的な展開
基本的なストーリーは上のあらすじのようになりますが、上演の展開としてはざっくり言うと
第1幕 物語中心
⇒クララの家でのパーティーから、深夜にねずみ達との戦いが始まり、勝利した後にお菓子の国へ目指すストーリー展開。
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第2幕 踊り中心
⇒物語の展開はあまりなく、お菓子の国での歓迎の踊りが中心。
となっています。
第1幕は、後半の「クララとくるみ割り王子の2人の踊り」や「雪のワルツ」以外は、THEバレエ的な踊りはなく、マイム(身振り手振りを使ったコミュニケーション)しかないので、初めてバレエを見る方はストーリーをおさえておいたほうがいいですね。
もちろんバレエ団(振付・演習)によっては、ちょこちょこと基本的な流れとは異なる演出もあるので、劇場で観劇する前はパンフレットなどで物語の概要はつかんでおいたほうがいいでしょう。
第2幕は、クララが最後に夢から目覚めるところ以外は、ほぼ踊りだけなのでストーリー性はないといってもいい感じです。
花のワルツを始めとして、テレビなどで絶対にどこかで聞いた曲もいくつかあると思うし、各国の特徴ある踊りを純粋に視覚的に楽しんでもらえばと思います。
最後に
バレエ『くるみ割り人形』はクリスマスの夜に、クララという女の子に起きたファンタジックな物語です。
バレエ鑑賞の初心者の方には、バレエは踊りだけの連続と思っている人も多いかもしれませんが、『くるみ割り人形』の第1幕のように、身振り手振り(マイム)で、物語を物語ることもできることを知ってもらいたいですね♪
他のバレエ作品によっては、『くるみ割り人形』の第2幕のように踊りが中心となる場面だけのものもありますし、さらにはストーリーのない踊りだけの上演形式の作品も多いですが、バレエは沈黙劇とも言える側面もあるので、そんなことも意識しながらバレエ『くるみ割り人形』を、物語と踊りの両方で楽しんでもらえればと思います。