バレエ好き、あるいは音楽好きならば、何万回と接するであろう名作――チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』。
でも、実際の道具としての“くるみ割り人形”で、クルミを割ったことはもちろん見たこともないという人もいらっしゃるのではないでしょうか!?
試しに「くるみ割り人形」とネット検索しても、圧倒的にヒットするのはバレエの『くるみ割り人形』で、本物の“道具”としてのくるみ割り人形は、なかなか画面上には出てこないものです。
けれども、少しでも『くるみ割り人形』という作品に関わったことがあるなら、やはり一度くらいは“本物”に触れておいておきたいものです。

実際の「くるみ割り」を見てみよう!
そういうわけで、まずは実際に「くるみ割り人形」でクルミを割っている映像を見てみましょう!
幸いなことに、今はYouTubeを開けばすぐに動画で確認できます。
木製の人形がクルミを口に挟んで、「パキッ」と割るシーンは見ていて気持ちいいですね。
見た目の“おもちゃっぽさ”からは想像できないほど精巧な作りをしていて、しっかりと割ることができています。
ドイツ製の伝統的なくるみ割り人形は、「てこの原理」をうまく活かして設計されています。
実にシンプル仕組みで、後ろについているレバーを上げると口が開き、そこにクルミをかませて、レバーを下げれば、見事に「パキッ」と割れる原理です。
見た目はコミカルな兵隊や王様の姿でも、口の部分にはちゃんと力が加わる仕組みになっており、単なる飾りではなく、実用的でもある感じですね。
もちろんバレエでは舞台映えすることを目的としているので、サイズは大きく、装飾も鮮やかで、壊れる・修復されるといった“物語の仕掛け”を盛り込むことも多いです。
クルミを割る演出があるカンパニーも存在しますが、実際には割れているように見せているように細工をほどこしているはずでしょう。
「くるみ割り人形」ってそもそも何??
では、あらためて「くるみ割り人形」とは何なのか歴史をたどってみましょう。
起源としては17世紀後半のドイツ、特にエルツ山地(ザイフェン)やニュルンベルクといった地域で盛んに作られてきた伝統工芸品です。
E.T.A.ホフマンの原作『くるみ割り人形とねずみの王様』の舞台もニュルンベルクというドイツの都市ですが、そう考えると「くるみ割り人形」の物語は時代背景に忠実と言えますね。
やみくもにニュルンベルクという都市を選んだわけではないことがわかります。

おもちゃの人形というだけでなく、クルミを割るという実用的な側面もありましたが、現代では、どちらかといえばクリスマスの装飾品というイメージが強いでしょう。
実際のところ、バレエの人気とともに「おしゃれなインテリア小物」として定着している印象です。
それでも今もなお、ザイフェンなどの職人たちが“本当に割れる”人形を作り続けており、伝統文化は廃れずにしっかりと生き続けて、現代のクララ達を喜ばせています。
「くるみ割り人形」はどこで買える??
「くるみ割り人形」自体は、Amazonや楽天でも「くるみ割り人形」と検索すれば、兵隊姿や王様姿の人形がずらりと出てきます。
ただし、これらの多くは装飾目的です。
たとえ口が動いたとしても、実際にクルミを割れるほどの強度がないことが多いです。

クルミを割ることが可能な「本物」を求めるなら、やはりドイツの伝統工房の作品が一番でしょう。
ここではErzgebirge Palace というサイトをご紹介しておきます。
職人が手作業で彩色し、精巧な仕組みを組み込んでいて、アート作品としての価値もあります。
ただ正統派な人形になると、5万円近くします・・・。
実際に使ってみたいのか、それともクリスマスに飾って楽しみたいのか――その目的によって選び方も価格帯も大きく変わりますので、そこは財布の中身との相談となるでしょう。
最後に
『くるみ割り人形』というバレエに深く関わりながら、肝心の“本物”を見たことがないというのは、舞台版の「灯台下暗し」と言えますよね。

「くるみ割り人形」はクルミを割るという実用品であり、ドイツの伝統工芸であり、そしてチャイコフスキーの名作を支える象徴的な存在です。
舞台の中では魔法をかけられて王子になるし、現実世界ではクリスマスを彩るインテリアにもなります。
これほど多面的に愛される存在は珍しいのではないでしょうか。
バレエで踊った記憶や音楽を弾いた経験に、実際の「パキッ」というクルミが割れる「音楽」が加わった時、バレエ『くるみ割り人形』という作品がまた違った輝きを見せてくれるでしょう。