バレエ

バレエ『くるみ割り人形』のチェレスタは2幕のいろんな場面で演奏されている!「金平糖の精の踊り」以外でチェレスタが使われている場面のご紹介♪

バレエくるみ割り人形』の発表会を控えていたバレエ教室で

「チェレスタ奏者の人って、「金平糖の精の踊り」以外は暇だし、出番まで待ちくたびれちゃうよね~」

っていう大人バレエの方がいました。

女性ヴァリエーションが有名すぎて気づかれないのかもしれませんが

チェレスタは2幕全般で弾いているんですよ♪

確かに1幕での登場はないし、「金平糖の精の踊り」だけしか主要なメロディーを演奏することはないので、他の演奏箇所はかすんでしまいがちです。

その大人バレエの方は、アマチュア・オーケストラ経験者(ヴァイオリン弾き)であったにもかかわらず、チェレスタが「金平糖の精の踊り」以外で弾いているのを知らなかったので、これはバレエをしている人もひょっとして知らない?のかもと思い、今回は

チェレスタが「金平糖の精の踊り」以外で弾いている場面

を動画やスコア(オーケストラ総譜)とともにご紹介したいと思います。

チェレスタの登場場面を知っておくと、チェレスタという楽器はクララや金平糖の精を表現していることがわかるので、踊りや振付に生かせますよ!

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チェレスタの登場は大きく分けて6箇所ある。

チェレスタは1幕では登場しません。

2幕から出てくるのですが、ここでは大きく6箇所に分けて説明していこうと思います。

①2幕1曲目の途中(No.10)

②2幕2曲目の冒頭(No.11)

③2幕2曲目の途中(No.11)

④「金平糖の精の踊り」(No.14)

⑤フィナーレ(No.15)

⑥アポテオーズ(No.15)

①2幕1曲目の途中(No.10)

●舞台動画(49:25~)

●演奏動画(49:20~)

ここで初めてチェレスタはハープと一緒に華麗に登場してきます!(下のスコア赤枠部分)

さんざん弦楽器・管楽器で盛り上がった後、シンバルの合図をきっかけにハープと一緒に優しくサラッと入ってこなければならないので、かなり緊張の場面と言えるでしょう。

そのあとにヴァイオリンのハーモニクス(弦を押さえず、軽く触れるだけにして、高い音を出す奏法)に合わせて、かわいらしく裏で弾いているがすごいきれいです♪

ちなみに基本的にはチェレスタは

金平糖の精(クララの大人の理想像)

を象徴していることになっています。

スコアを見ても、基本的にはこの場面で金平糖の精が登場することになっているので(青枠部分)、舞台動画ではゴンドラのシーンとなっていますが、チャイコフスキーの作曲意図に従うのであれば、金平糖の精がここで初登場する振付のほうがいいでしょう。

ピーターライト版などでは、このチェレスタの登場に合わせて、金平糖の精が厳かに登場する演出になっています。

ドラジェの精の登場(スコアの青枠拡大)

②2幕2曲目の冒頭(No.11)

●舞台動画(50:27~)

●演奏動画(5:54~)

次は2曲目の冒頭にアルペジオ(分散和音)で、フルートのから音の流れを受け取る感じで出てきます。(スコアの赤枠)

ここでのフルートの「フラッター・タンギング」と言われる奏法も、『くるみ割り人形』で効果的に使われたことで有名ですね。(スコアの紫色の枠)

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チャイコフスキーは『くるみ割り人形』で夢の世界に観客を誘い込むために新しい試みにトライしていますが、ここではチェレスタとフラッター・タンギングという新しい秘密兵器が見事に融合されています。

舞台動画では、なぜかネズミの逆襲が始まる演出になっていますが、本来的にはクララの到着が予感され、金平糖の精と出会う前振りとなるべきところです。

③2幕2曲目の途中(No.11)

●舞台動画(51:43~)

●演奏動画(7:22~)

ちょっと聞き取りづらいのですが、ここでもチェレスタが登場しています。

演奏動画の7:52~あたりから見るとチェレスタが弾いている場面が出るので、わかりやすいかもしれませんね。

弦楽器の音に合わせてキラキラと動くチェレスタの音色は、夢の世界を表現しているようでうっとりしてしまう部分です。

舞台動画では踊りに置き替えられてしまっていますが、本来はクララとくるみ割り人形が登場して、金平糖の精と王子に出会い、主要登場人物4人が勢ぞろいするところです。

この場面でのチェレスタの演奏は、舞台動画ではネズミたちの逆襲(ピーターライト版は王子によるマイム)が始まるまで続きます。

④「金平糖の精の踊り」(No.14)

●舞台動画(7:15~)

●演奏動画

説明不要のグラン・パ・ド・ドゥの「女性ヴァリエーション」ですね。

前述したとおり、チェレスタは基本的に「金平糖の精」を表現したものであるので、チャイコフスキーの意図をくむなら

ここまで出てくるチェレスタの演奏はすべて「金平糖の精」が関わったほうがいい

かもしれませんね。

チェレスタの鳴る場所には、金平糖の精か、その美しさと品格に憧れるクララが登場するべきでしょう。

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⑤フィナーレ(No.15)

●舞台動画(1:31:15~)

●演奏動画(41:25~)

フィナーレでもチェレスタは出てきて、ハープと共にさっそうと登場します。

個人的にはここのチェレスタのちょろちょろとした動きが好きで、途中からピッコロが加わるところもおしゃれでいい感じです♪

残念なのが舞台動画にあるように、中国の踊りが入り込む演出が多いことです。

やはりチェレスタの登場場面では、金平糖の精かクララが踊るべきで、ライトモチーフとでも言うべきチェレスタの存在意義は崩してほしくないですね。

そこのところをわかっている振付家は、たとえば金平糖の精とクララが一緒に踊るようにしたりしています。

またピーターライト版では、クララが「花のワルツ組」と一緒に中央で踊るような演出になっています。

⑥アポテオーズ(No.15)

●舞台動画(1:33:00~)

●演奏動画(43:10~)

ここもちょっと聞き取りづらいですが、メロディーに合わせてチラチラと弾いています。

夢から覚めても、金平糖の精がクララを見守っているような優しさに満ちあふれた動きです。

また、クララが金平糖の精のような立派な大人になるであろうこともチェレスタで示唆されています。

チェレスタが影で2幕全体を支配していることを忘れないでほしいと思います。

最後に

ここまで見て、チェレスタは

「金平糖の精の踊り」の一発芸ではない!

ことをわかってもらえたかと思います。

チェレスタこそが金平糖の精であり、2幕のいろんな箇所で登場することによって、「お菓子の国の女王」であることを表現しているのですね。

2幕で金平糖の精のモチーフとして随所にチェレスタが登場することにより、そこから生まれる響きで世界を魅了していったと言えるでしょう。