今回はバレエ『くるみ割り人形』の演奏会用組曲しか、聴いてなかったり演奏してしなかったりする人は、『くるみ割り人形』に対する認識がバレエを見たり踊ったりする人と違うことをお話ししたいと思います。
バレエ関係者は基本的に『くるみ割り人形』の踊りも音楽も知っていますが、バレエも見たこともなく演奏会用組曲しか聴いてない人は、踊りのシーンを見たこともないし、バレエ音楽であることを知らないこともあります。
そこでここでは演奏会用組曲しか聴いてない人にありがちな『くるみ割り人形』のとらえ方を、3つに絞ってご紹介したいと思います。
バレエ好きな人と演奏会用組曲しか聴いてない人が、バレエ『くるみ割り人形』の話をする時に役立つ予備知識となるので参考にしてみてください。
『くるみ割り人形』がクリスマスストーリーだと知らない
バレエ『くるみ割り人形』の全幕を見たことがない人、もしくは演奏会用組曲の音楽しか聴いたことがない人は、物語がクリスマスストーリーであることを知らない人も多いです。
そもそもバレエ音楽であることを知らない人も、アマチュア・オーケストラでいました。
演奏会用組曲だけしか触れてきていない人だと、意外にストーリー性のある舞台作品ということは知らない人も多いです。
ラヴェルの『ボレロ』もバレエ音楽であること知らない人が多いですが、音楽自体が素晴らしくて一人歩きしてしまうと、もはやもともとはバレエ作品から来ていることなど予想だにしていないのかもしれません。
「花のワルツが」が一番重要な曲と認識されている
これは幕物を見ずに演奏会用組曲しか聴かない人の弊害なのですが、『くるみ割り人形』の最も重要な曲は「花のワルツ」であると認識している人も多いです。
演奏会用組曲では最後に配置されてもっとも華やかに演奏されて終わるからなのですが、そう思い込んでいる人がバレエの『くるみ割り人形』を見て、「花のワルツ」のポジションがそれほど高くないことに驚くことも多いです。
もちろんバレエ界でも「花のワルツ」は、コールドバレエ(群舞)とは言え、第2幕のディベルティスマンの中でオオトリを飾る最も有名な踊りですが、バレエでのオオトリはやっぱりグラン・パ・ド・ドゥになりますよね。
演奏会用組曲しか聴いてない人にとっては、「花のワルツ」がトップ・オブ・トップだという認識のため、その裏返しで次に説明する通り「金平糖の踊り」がバレエでは超メジャーな踊りに入ることにビックリしがちです。
「金平糖の精の踊り」は扱いが小さくて、地位が低い
演奏会用組曲しか聴いたことのない人にとって、「花のワルツ」が最も重要な曲であるがゆえに、「金平糖の踊り」は逆にその地位は低く小さな扱いです。
演奏会用組曲ではチェレスタの響きが独特であることで有名ですが、演奏自体はほとんどサラッと流れておしまいです。
バレエ関係者には、最後のグラン・パ・ド・ドゥの女性ヴァリエーションとして、主役のダンサーが踊る最も観客からの視線を浴びる場面ですが、組曲版ではキャラクター音楽の一部で、ちょっと雑とも言える扱いです。
実際の踊りを見たこともないしバレエであることも知らない人には「なんか、かわいい曲だね」的な感じで終わってしまいます。
「金平糖の踊り」は踊りを伴ってこそ、その真価を大きく発揮できるものなので、音楽しか聴いたことない人には、ぜひバレエのほうを見てもらいたいものですね。
最後に
『くるみ割り人形』はバレエの全幕上演よりも前に、音楽が発表されて評判になってしまうぐらい音楽の完成度が高いものだったので、音楽がバレエから独立して演奏されることが多いです。
音楽単体で存在できるだけに、全幕バレエを見るところまでいかないのは、『くるみ割り人形』の音楽の本質を見ていないとも言えるので、今まで演奏会用組曲しか聴いたことない人にはぜひバレエを観賞してほしいですね。
バレエ関係者の方は、バレエに興味のない人たちのこういった事情を理解しておくといいでしょう。