今回は『くるみ割り人形』のバレエ全曲版と演奏会用組曲版の「細かすぎて伝わらない」違いのまとめ記事です。
知っているからって鑑賞や自分の踊りに大きなプラスになることはないのですが、ちょっと気になる違いの小ネタの盛り合わせになっています。
『くるみ割り人形』を観賞した後などに盛り上がる時の素材として知っておくと、話のネタになっていいですよ♪
それぞれの項目に動画や譜面を載せてある詳細のな記事がありますので、音や譜面上での確認がしたければ、覗いていってください!
【名称違い】バレエ全曲版「序曲(Overture)」・演奏会用組曲版「小序曲(Overture Miniature)」
『くるみ割り人形』の冒頭曲は、バレエ全曲版では「序曲(Overture)」、演奏会用組曲版では「小序曲(Overture Miniature)」と名称が異なります。
「Miniature」には、演奏会用組曲がバレエの短縮版であることを示す意図だけでなく、楽器編成の特徴を反映する意味が込められています。
序曲の楽器編成は低音を省き、繊細かつ精巧な音楽構造が特徴で、「Miniature」には単なる「小ささ」の意味を超えた「緻密な」という芸術的意図が含まれていると言えます。
また、「Miniature」には「細密画」というニュアンスもあり、組曲全体を精巧なおもちゃ箱のように、緻密で色彩豊かな芸術作品として表現したと考えられます。
この違いを理解することで、序曲の魅力やチャイコフスキーの意図がより深く感じられるでしょう。
【一音違い】「アラビアの踊り」のタンバリンの一音
『くるみ割り人形』のバレエ全曲版と演奏会用組曲版では、速度記号や強弱の指示など所々で異なるところがありますが、ある曲にはたった一音だけ違うところがあります。
それが「アラビアの踊り」の最後に聞こえるタンバリンの一音です。
この曲は、クララが訪れる「お菓子の国」で披露される踊りの一つで、異国情緒漂う静かで神秘的な場面です。
この曲の最後にタンバリンが8分音符でリズムを刻み静かに消えていくのですが、その中の一音が全曲版と組曲版で違います。
下の詳細記事で実際の譜面と演奏動画で詳細に紹介していますが、簡単に説明すると・・・
全曲版では「タン・タタタタ・タン」の2回目の「タン」の最初が8分休符で音がなく、組曲版では2回目も同じリズムで叩かれているのです。
全曲版 「タン・タタタタ・タン」 「(うん)・タタタタ・タン」
⇒2回目の始めのタンはなし(8分休符)
組曲版 「タン・タタタタ・タン」 「 タン ・タタタタ・タン」
⇒1回目も2回目も同じ
この微妙な違いは、指揮者や演出家によって変わる場合もありますが、一部の愛好家にとっては聞きどころであり、演奏会の楽しみの一つになっています。
バレエ鑑賞にはまったく役立たない知識ですが、この違いを知ることで『くるみ割り人形』を聴く際に新たな楽しみ方が生まれるかもしれません。
次に劇場で行く時はぜひ「アラビアの踊り」に耳を傾けてみてくださいな!
【短縮違い】「金平糖の精の踊り」の終盤カット
『くるみ割り人形』の「金平糖の精の踊り」には、バレエ全曲版と演奏会用組曲版で明確な違いがあります。
演奏会用組曲版では、終盤のテンポが速くなるPresto以降がカットされており、幻想的な雰囲気で終わります。
一方、全曲版では終盤からのテンポアップの部分があり、視覚的にもダイナミックな振付がなされています。
このカットの理由は明らかではありませんが、時間的制約や音楽的配慮が背景にあると考えられます。
組曲版はバレエ全幕初演前に演奏会用として急遽編まれたため、ラストを飾る「花のワルツ」の演奏時間とのバランスを取るためにカットされた可能性があります。
また、演奏する上で「金平糖の精」が持つ夢幻的な雰囲気を保つために、最後の動きが激しくなることはカットして曲想を統一する配慮だったのかもしれませんね。
なお、バレエ全幕上演でも振付家が意図的に終盤を省く場合がありますから注意が必要です。
例えば、ロシアのマリンスキーバレエ団のワイノーネン版では、金平糖の精の優雅さを強調するためなのか、テンポアップ部分が省略されています。
最後に
以上3つの違いは、明日すぐに役に立つ知識ではもちろんありません(笑)
ただ、バレエファンなら、ちょっとした違いなだけに、興味をそそられるトリビアな知識ですよね♪
知っておくと、劇場での鑑賞前のバレエートークに花を咲かせる種となり『くるみ割り人形』をより楽しむことができるので、各項目にある詳細記事も参考にしてみてくださいな♪